シリーズ『くすりになったコーヒー』


 兎にも角にも生活習慣病の蔓延にはびっくりするばかりです。これだけ注意喚起されているのに、一向に減りそうにありません。それどころか、最近の山手線車内で見かけるのは、あまりに太り過ぎて立っていられない中年者です。


 太り過ぎを見る世の中の反応にも疑問がわきます。特にTVにはBMI>30の芸能人が出まくっているではありませんか。そういう人たちが「ダイエット食」のCM出演という異常事態を見て見ぬふりしてか、何の警告も発しない厚労省は何のためにあるのでしょうか?


●エビデンス欠乏のサプリメントを取り締まるより、それをPRするタレントの方が問題だ!


 間もなく平成が終わったら、世の中から正義がなくなる時代に突入すると筆者は感じているのです。


●2型糖尿病の行き着く先は医療費泣かせの「週3日の透析」だが、「生活習慣が原因の患者」でも自己負担額はほんの少し。




 病気は色々ありますが、糖尿病だけにかかっている国民医療費が年に1兆2000億円を超えています。ですから生活習慣を改善せずに透析治療を受けざるを得なくなる事態とは、これまた正義感の欠落と言わざるを得ない次第です。ではありますが、今回は(やになっちゃうなあと思いつつ)「透析患者が飲むコーヒー」について、最新情報を紹介します。ポルトガルの透析施設8か所から集められたデータです。


●1日3杯以上を飲む人たちは、比較的年齢が若く、血圧とカリウム値が高かった(詳しくは → こちら)。


 上の図は、日本透析医学会「図説:わが国の慢性透析療法の現況(2015年12月31日現在」から引用しました。30万人を超える透析患者の年齢は60歳以上がほとんどです。ですから「若い」と言っても、そろそろ定年を迎える準備に入ったという年齢層です。この層がコーヒーを多めに飲む理由は、現役で仕事に精を出しているからとも思われます。


 さてこの論文でグループ1はコーヒーを飲まない群、グループ2は1日に2-3杯のコーヒーを飲む群、そしてグループ3は3杯以上を飲む群です。このグループ3の血圧が高い理由は、コーヒーのせいかも知れませんが、より高齢者に比べてということですから、特に意味はないと思われます。むしろ血清カリウム値が高いことに気配りが必要です。本来透析患者は水分とミネラルの摂取を制限されていますから、コーヒーの飲み過ぎには、カリウム過剰となるかもしれないことに、一応要注意だと思われます。


 逆に、コーヒーを飲まないグループ1は高齢で、透析量は最も多く、拡張期血圧とカリウム値が低かった。


 さてさて兎にも角にも「2型糖尿病」と言われたら、腎機能の低下に最大の注意が必要です。コーヒーは推定糸球体濾過量eGFRの年次低下を遅らせますが(第361話を参照)、長寿社会ではそれが1年でも余計に遅くなるように努めることが、透析抜きの健康長寿への道なのです。


(第363話 完)


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