シリーズ『くすりになったコーヒー』


 膵臓癌は癌のなかでも最も治り難いとされています。ですから「治療より予防」が何より大事です。膵臓癌は、運動不足と暴飲暴食、メタボ、糖尿病などが原因の生活習慣癌ともいえる実に手強い癌なのです。


 コーヒーに関する疫学調査では、飲んでも飲まなくてもリスクに差はないという調査論文が多かったのですが、改めて男女を区別して調べてみると、男性にとっては有難い結果が得られたのです。図をご覧ください。


●コーヒーを1日に3杯以上飲む日本人男性は、膵臓癌になる危険率が60%に軽減している(詳しくは → こちら )。


 これは厚労省調査班が得た結果ですが、ボストン大学の調査でも似たような結果でした。女性はどうかと言いますと、残念ながらデータがばらついています。恐らく、女性ホルモンの関係でばらつくのだと思われます。近い将来、女性ホルモンの高値/低値で層別する更なる調査に期待したいものです。



 さて、コーヒーが膵臓癌を予防する理由については今のところ不明です。ただし、糖尿病とインスリン耐性が膵臓癌のリスクであることを考えますと、ここでもやはり「コーヒーの抗炎症作用」が効いていると思われます。


●カフェインと恐らくクロロゲン酸の抗炎症作用が、膵炎の進展を予防して、膵臓癌の発症リスクを軽減している。


 これはまだ1つの仮説ですが、かなり有力な仮説です。何故なら、カフェインがラットの実験糖尿病を予防すること(第37話)、クロロゲン酸が糖吸収を抑えること(第58話)など、動物実験のデータが揃いつつあるからです。


 もしそうだとするならば、次は「どんなコーヒーがいいだろうか?」ということになるのですが、薬理学的な諸般の状況に配慮しますと、


●「浅煎り豆と深煎り豆の1:1ブレンド」


 これが一番よさそうです。こういうコーヒーは有効成分のカクテルみたいなものですから、どれが効いているか解らないときとか、兎に角今は健康だという人には一番無難なコーヒーなのです。


 運動不足と暴飲暴食に覚えのある男性諸君、当分の間はカクテルコーヒーを飲みながら、科学の進歩が実を結ぶときを待ってみては如何でしょうか。


 (第75話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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