シリーズ『くすりになったコーヒー』


 今日からカフェインシリーズの始まりです。しばらくの間、「古くて新しいカフェインの効き目」をお楽しみください。まず初めは、その優れた「抗炎症作用」です。


●カフェインは炎症を抑える。特に、炎症を予防する。これを、カフェインの「抗炎症作用」という。


 カフェインが炎症を抑えれば、誰でも感じる次の症状が和らいでくれる。


●発熱、痛み、腫れ、発赤 → これらを「炎症の4大症状」という。


 インフルエンザに罹ると、最初は鼻水やくしゃみが出て、風邪かな? と思っていると、急に熱が出るのです(発熱)。熱が高くなると、関節や筋肉が痛み出し、頭も痛みます(痛み)。もっと悪くなると、喉が腫れて赤くなり(腫れと発赤)、医者に行くほど悪くなります(インフルエンザのチェックシートは → こちら )。


 病気ではなく、スポーツでも炎症が起こります。打撲や怪我でも起こります。体温が上がらなくても、「腫れた筋肉が痛んで熱をもった」なら、症状が出揃った立派な炎症です。


 慢性肝炎、慢性腎炎、その他「炎」がつく病気は、自覚症状が出なくても、どれも炎症性疾患の仲間です。そうなると、もうほとんどすべての病気が当てはまってしまいます。そうでないものを上げるとすれば、精神疾患かな? とも思われますが、それでも脳のなかの大事な部分に「炎症」の特徴が見られるのです。


●炎症の症状は、ほとんどすべての病気に認められ、自覚できることが多いけれど、自覚できないと手遅れになることがある。


 炎症は、老化とも関係しているという説があります。後期高齢者になるまでもなく、シワやシミが1つできただけで、老化を感じる人もいます。老化現象とは「一生かけてゆっくり進む炎症の蓄積」なのです(もっと知りたければ → こちら)。


 薬の歴史を見てみると、病院の処方箋に「痛み止め(または熱冷まし)とカフェイン」の両方が書かれることはほとんどありません。しかし、大衆薬の世界では昔から当たり前のことです。同時に飲めば、薬の効果が強く出るからです。(詳しくは → こちら )。


 現在、大衆薬の「かぜ薬」は全部で719品目ありますが、その89%の641品目にカフェインが入っています。残りの78品目は小児用ですから、大人用にはすべてカフェインが入っているのです。


 その他にも、解熱鎮痛薬294品目の81%、鎮咳去痰薬357品目の38%、滋養強壮薬1613品目の43%、よい止め88品目の51%にもカフェインが入っています。


●カフェイン無くして大衆薬は成り立たない。


 となると、一体何が効いているのか解らなくなってしまいます。でもご安心ください。急な炎症には、カフェインだけでは無効です。鎮痛薬や解熱薬などとカフェインを一緒に使わなければ効きません。こういう相乗効果こそが大衆薬の効き目といえるのです。以上は症状が出てからの話です。


 第35話「薬より養生」の立場で言うならば、普段からカフェインを飲んでいると、炎症の予防に役立ちます。これぞ「薬より養生」の本当の意味ではないでしょうか。同じように、最初は軽い炎症でも更なる悪化を防ぐにも、カフェインは効果を発揮します。


●カフェインの抗炎症作用は、病気を予防したり、病気の進行を遅らせる効果のことである。


 今はまだ私達だけの実験ですが、実験動物に予防的にカフェインを飲ませておくと、


□1□ 膵臓毒ストレプトゾトシンによる糖尿病を予防できる(詳しくは → こちら )。


□2□ 肝臓毒リポ多糖による急性肝炎を予防できる(詳しくは → こちら )。


 これからは世界中の研究室からカフェイン・エビデンスが出てくるものと思われます。


(第37話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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