シリーズ『くすりになったコーヒー』


 6月7日の月曜日、スポンサー会社の女性オーナーさんが我が家に来られた折、久しぶりにクロマトコーヒー(第53話を参照)を淹れました。透明なガラス管の先から流れ落ちる濃厚なコーヒーは・・・「コーヒースピリッツ」の味がします。でも特別な珈琲豆ではありません。JR蒲田駅のカルディーコーヒー店で買ってきた200グラム450円のイタリアン焙煎です。この安くて苦いコーヒーをクロマトグラフィーで淹れるということは、アラジンの魔法の壺からスピリッツだけを助け出すようなものなのです。


 オーナーさんが驚いた「コーヒースピリッツの味」には不思議な魔力が宿っています。


●コーヒースピリッツを飲んでいれば、アルツハイマー病のリスクが減る。(詳しくは → こちら )。


 これはコーヒーの効能を調べた疫学調査の中間まとめで、今はまだ可能性が高いというだけの話です。これとは別に数ある動物実験の結果を見ると、可能性は確かに前向きなのですが、1つだけ腑に落ちない実験があります。


●モデル動物にカフェインを飲ませるとアルツハイマー病にならないが、コーヒーを飲ませてもならないとは限らない。


 そうなのです。コーヒーにはカフェインの効果を打ち消すものが入っているのです。前回「高脂血症」で話したのと同じことです。そこで改めてアルツハイマー病の危険因子について調べ直しました。


●コレステロールが高い人はアルツハイマー病の危険率が最大3.1倍になる。高血圧と喫煙が重なれば10倍に近づく(詳しくは → こちら )。


 日本語でもたくさん書かれていますので、信頼性の高い医学雑誌を1つだけ紹介します。どうやらコレステロールが最強の悪玉であることは間違いなさそうです(詳しくは → こちら )。


 普段コーヒーを飲まない人にコーヒーを飲んでもらうと、血中コレステロールが高くなります。ところが、いつもコーヒーを飲んでいる人に同じ検査をしても、高くなる傾向はありません。でも低くなることもありません。


 コーヒーに入っていてコレステロールを高めているのは、前回書いたジテルペン類と同じものです。食用脂とは違う嫌な匂いと味がします。普段からコレステロール高目の人が、ジテルペン類の混ざった不味いコーヒーを飲むと、コレステロールがもっと高くなります。


●血中の過剰なコレステロールは、血液と脳の境目で「脳に入る悪玉物質の関所」を破る。


 ということで、コレステロールは血液・脳関門の「関所破り」というわけです。破られた関所を通って脳に侵入する悪玉親分はTNF−α(ティーエヌエフアルファ)という超悪玉のタンパク質・・・脳神経を融かして記憶を破壊し始めます。でもご安心ください。


●美味しいコーヒーのカフェインは、血液・脳関門の「関所」を守る(詳しくは → こちら )。


 一度破られた関所が元に戻ることはありませんが、ちょっとの傷ならカフェインが直してくれます。カフェインは細胞の生きる力を強めるのです。ただし壊れ方がひど過ぎると、もうどうにもなりません。ですから日頃からジテルペン・フリーの美味しいコーヒーを飲む必要があるのです。


●フィルターコーヒー、ネルドリップ、もっといいのはコーヒースピリッツのクロマトコーヒー


 そうなのです。紙やネル布でろ過して除けるジテルペンは、コーヒー顆粒層を通せばもっと上手にろ過できるのです。ノーベル賞学者を5人も出したクロマトグラフィーの理論によれば、美味しくて良く効くコーヒーを淹れることができるのです。


●ノーベル賞は本当に凄い。


【カフェが好きな方へ】できればドリップコーヒーが美味しい店を選びましょう(第63話を参照)。


【クロマトグラフィーを知りたい人は】→ (詳しくは → こちら )。


もっと知りたい人は(こちら → oka@toyaku.ac.jp)


(第64話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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