シリーズ『くすりになったコーヒー』


 糖尿病を予防するお墨付き食品は「全穀」と「コーヒー」の2つです(第7話参照)。では、「全穀」と「コーヒー」の一体何が糖尿病を防ぐのでしょうか?


 主食の米とアフリカの木の実を比べるなんてとんでもないっ!と、栄養学者に怒られるかも知れませんが、不思議なくらい似たところがあるのです。そしてそのことに製薬会社は気づいていません。


 これも化学構造式で説明するのが便利です。左がコーヒーで右がお米です。コーヒーは生豆か浅煎豆、お米は全穀か米油に限ります。ですからイタリアンコーヒーを飲んだりコシヒカリ吟醸米を食べても効きません。くれぐれも間違えないように!


●ガンマーオリザノールの医療用医薬品は5品目あって、ブランド薬は大塚製薬の「ハイゼット」、他はジェネリックです。


●ガンマーオリザノールを配合した大衆薬は133品目あるが、全品目10ミリグラム配合で、工夫があるとは思えません。


●コーヒーのフェルロイルキナ酸はくすりではありませんが、米国製サプリメント「クロロゲン酸」の成分の1つです(例えば → こちら )。

 さて、貴方は右と左の構造式(下記参照)の違いに気づきましたか? 気づかない人は、今すぐ眼科受信をお勧めします。違いは赤い部分で、黒い部分は同じです。そして体に吸収されると、黒い部分のほうが多くなるのです。


 ということですから、右と左のどちらを食べても、黒のフェルラ酸の効果が出てきます。つまり、薬理学的には右と左は似ているのです。本当かどうか、効き目を比べてみましょう。


 ガンマーオリザノールには医薬品「ハイゼット」がありますから、添付文書を見ればわかります(→ こちら)。ハイゼット画面が出たら、カーソルを動かして「効能または効果」の欄を探します。見つかりましたかっ!


☆☆☆ガンマーオリザノールの「効能または効果」とは、


1.高脂質血症


2.不安・緊張・抑うつ


となっています。

 さて問題は、コーヒーのフェルロイルキナ酸のほうです。これは何に効くのでしょうか?医薬品ではないので、添付文書はありません。そこでデータベースを検索して原著論文を探しました。そのなかから1つだけ紹介すると、


●ガンマーオリザノールとフェルラ酸(黒い共通部分)の比較試験では、強弱の差はあるものの、どちらも高脂血症を改善し、血圧を下げる(詳しくは →こちら画面が出たら右側PDFをクリック)。


 以上をまとめますと、コーヒー(生豆か浅煎豆)とお米(全穀か米油)は、どちらも同じように脂質代謝を改善して糖尿病を防ぎます。同じように効く理由は、黒い部分が効いているからなのです。


 では次に2番目の効能効果「不安・緊張・抑うつ」はどうでしょうか? 答えはこれもYes! です。第13話で解説したように、フェルラ酸は副交感神経を刺激して自律神経失調を癒します。ストレスが治まれば、メタボリックシンドロームにもならずにすみます。


 さあお解りですか? でも、今更玄米生活なんてまっぴら、コーヒーは深煎に限る・・・という中高年の糖尿病予備軍の人は、お医者さんに「ハイゼット」を処方して貰うか、「コーヒー生豆ジュース」を飲みましょう(詳しくは → コーヒーの処方箋)。カフェインの摂り過ぎにはご注意を!(詳しくは → カフェイン もうドーピングなどとはいわせない)。

【製薬会社の方へ】大勢の研究者がプロポリスの「カフェ酸フェネチルエステル」を研究しています。もったいない話です。「フェルラ酸フェネチルエステルとその仲間たち」を研究して下さい。赤い部分の最適な大きさが見つかるはずです。


(第27話 完)




栄養成分研究家 岡希太郎による
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