シリーズ『くすりになったコーヒー』

 今朝、神戸市にある日本コーヒー文化学会の事務局から電話・・・「新型インフルエンザのため、今週予定の学会懇親会は中止します」とのこと、これは残念なことです。


 メキシコで始まった新型インフルが世界中に拡散しています。日本でも目に見えない生命体が検疫をすり抜けて関西地方を襲撃しました。薬局ではマスクが品切れ、タミフルも品切れ、保育園も幼稚園もお休み、大学も臨時休講、会社だってマスク着用・・・間もなく東京もそうなるでしょうか? そこで厚生大臣に是非ともお伝えしたい話です。

「コーヒーには抗ウイルス効果がある」と論文発表したのは、和歌山医大の小山一教授です。(詳しくは → こちら)。


 まだ昨年のことなので世間に情報は行き渡っていませんが、小山教授の話ではコーヒーの抗ウイルススペクトルの幅は広く、ほとんどすべてのウイルスに効果を発揮するそうです。特にインフルエンザウイルスにも有効なので、今回の新型ウイルスに効いても不思議はないのです。


 第17話に、コーヒーの抗癌作用について紹介しました。1日に3杯程度のコーヒーで、肝臓癌と子宮頚癌なら予防できます。これらの癌はウイルスが原因だからです。効き目の原理は、「ウイルスが引き起こす慢性ウイルス性炎症をコーヒーが抑える」ということのようです。

 もう少し専門的に言えば、ウイルス感染で増える炎症性タンパク質をコーヒーが抑えてくれます。その結果、感染細胞が死ななくなるので、ウイルスがいくら細胞のなかで増殖しても外に出ることができません。つまり、ウイルスは細胞という檻に閉じ込められたままなのです。ですからウイルス性の炎症は起こらず、癌にもならなくなるのです。


 であるならば、コーヒーを飲んでいる人は季節性のインフルエンザにも罹りにくいのではないか? とも思えます。しかし、そういう疫学調査を書いた論文は見当たりません。今日もまた探してみたのですが、やはり見つかりませんでした。どうしてなのでしょうか? 明確な答えはわかりませんが、答えらしきものはあります。「コーヒーを飲んでいる多くの人の数と同じぐらい多くの人が毎年インフルエンザに罹るので統計学的な差が出ない」のです。つまり、新発見がないので論文が書けません。

 もしそうなら、コーヒーの可能性が高まります。早速コーヒーで嗽(うがい)をしましょう!疫学調査などなくっても、小山教授の実験が正しければ、コーヒーは口の中の粘膜にくっついたウイルスを殺してくれるはずです。コーヒーが好きでいつも飲んでいる人ならば、コーヒーを飲む回数を1回増やし、コーヒーを口に含む時間も少しだけ長引かせよう。いつもよりは少し濃いめで、カフェインの多いコーヒーを飲もう。カフェインの抗ウイルス効果は小山教授以外にも、以前に論文を書いた人がいるからです(詳しく知りたい人は → カフェインもうドーピングなどとはいわせない)。

 酸っぱいコーヒーの効き目も馬鹿にできません。コーヒーに特有のギ酸が示す抗ウイルス効果は食品保存で実証済みです。米国で、ヨーグルトの冷凍保存に有効との話があるからです。高級モカの酸味が好きな人にはいいかも知れません。好きで信じて楽しめば、プラセボ効果を期待できます。


 ところで昔から、「お茶で嗽をすれば病気にならない」と言われてきました。今でも通用しているようです(例えば → こちら )。お茶のないイスラム世界ではもっぱらコーヒーがくすりでした(→ 珈琲一杯の薬理学)。コーヒーでもお茶でも、カフェインに違いはありません。


 マスクをして他人にくしゃみを飛ばさないよう気をつけても、隙間から飛び込んでくるウイルス退治は簡単ではありません。ですから時々マスクを外して、自分用ペットボトルのコーヒーで趣味と実益を兼ねてみては如何でしょうか?

☆☆☆コーヒー嗽ぐすりの作り方


〔処方箋1〕 生豆100グラム(できたらロブスタ種)をざっと水洗いしたら、1リットルのペットボトルに入れて、水1リットルを加えて、ひと晩冷蔵庫に寝か す。翌朝、豆ごと鍋に入れて一旦煮立ったら出来上がり。冷めてからペットボトルに入れて、お持ち歩き。時々思いついたら、適当に口に含んで嗽(うがい)する。1回のうがいは1口でよい。

〔処方箋2〕 通常のボトルコーヒーでカフェインを含んでいるもの。使い方は〔処方箋1〕と同じ。うがいではなく、飲んでもよい。飲み終わってから、水道水で嗽をしないこと。

〔処方箋3〕 インスタントコーヒーの場合、持ち歩きは困難なので、家や事務所に備え付けにしておく。飲みたくなくても、少しだけ淹れて、うがいする。勿論、飲んでもかまわない。デカフェやカフェインレスタイプに効果はありません。

尚、レギュラーコーヒーは嗽にはもったいないので、口に含んでから飲んでしまいましょう。


(第21話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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