シリーズ『くすりになったコーヒー』
『元気で長生きしたい』・・・年をとったらそう思う。でもそれは非現実的なので、『せめて生きているうちは元気でいたい』と思ったりする。長野県のとある片田舎に“ピンピンコロリ地蔵”が祀られていて、元気なお年寄りたちが畑仕事の合間にお参りするらしい。
古今東西に本物の“長生きぐすり”などあった例はありません。だからシンクレア博士がネイチャー誌に、赤ワインのポリフェノール“レスベラトロール”を食べた小さな線虫が長生きしたと発表したとき、生物学者は皆びっくりしたのです。
シンクレア博士の実験は続きました。線虫の次はショウジョウバエが長生きしました。その次はシロネズミが長生きしました。ならば『人も長生き?』ということで、博士は大手サプリメント会社の広告塔になりました。
この会社からカプセルに詰めた1回分500mgのレスベラトロールが売り出されています。実はこの量は赤ワイン500本分にも相当するので、同じ効果を赤ワインでとなると、1日に500本も必要です。実行すれば長寿シロネズミのようになれるかも知れません!?(子供は真似しないように!)。
そんなレスベラトロールが本当に効くかどうかはさて置き、動物実験では長寿遺伝子が働いて寿命が延びることは確かです。その遺伝子は人間にもあるので、人間に効いてもおかしくないということなのです。
さて話をコーヒーに移します。
●コーヒーに、赤ワインのレスベラトロールは含まれていません。
●コーヒーのポリフェノール“クロロゲン酸”は、長寿遺伝子に作用しません。
●コーヒーには、長寿遺伝子に作用する成分はなにも含まれていません。
でもコーヒーには別のパワーがあるのです。
☆☆☆コーヒーは病気を予防して長寿をもたらす。
人が死ぬときはほとんど病気が原因です。だから病気にならなければ長生きするのは当たり前です。ピンピンコロリ村でもこの原理を守って健康に心がけているのだそうです。しかし、さすがに“コーヒーを飲んで”というところまでは進化していません。
海外に目を向けてみると、『コーヒーを飲めば長生きする』という・・・そんな論文が出始めました。理由はやはり、『コーヒーを飲んでいると心臓病で死ぬ率が減るから』ということで、特に女性に効くのだそうです(→ こちら )
誰もが知っているように、死因のトップは癌、次は心臓病。コーヒーを飲んで糖尿病を予防すれば心臓病にも罹らずに、その分だけ寿命が延びる・・・そして70歳を過ぎると癌で死ぬ率も下がるので、結局『コーヒーを飲んで病気にならずに70歳まで健康でいれば、癌と心臓病で死ぬ率が下がる』という理屈なのです。
では一体どんな病気で死ぬかと言いますと、圧倒的に肺炎ということになりそうです。だから肺炎に罹らないように、コーヒーを飲んで深呼吸 (第14話)をして、肺のなかをいつも新鮮な空気で置き換えておくことが大事なのです。
しかしながら、コーヒーを飲んでいる人が長生きするという確かな証拠はまだありません。筆者独自の調査によれば、国別コーヒー消費量と平均寿命の間に何やら正の関係が認められます。ただしこのグラフも、コーヒーの長寿効果を否定はしませんが、積極的に支持するものでもありません。
なあ〜んだ・・・と思っても、のんびりコーヒー飲んで、グラフの意味するところを考えてみては如何ですか? これはというアイディアが浮かんだら → oka@toyaku.ac.jp
では次週をお楽しみに。
(第19話 完)