シリーズ『くすりになったコーヒー』

 半世紀前までカフェインはぜん息の薬でした。でも重症には効きにくかったので、製薬会社はカフェインとよく似たテオフィリンを開発しました。コーヒーにも少しだけテオフィリンが入っていますが、重症には不足です。


 ぜん息になると息ができないほど苦しい発作が起こります。ですから発作を予防することが大切で、腹式深呼吸は簡単で効果的な予防法の1つとされています。


 臨床試験によれば、カフェインの効き目は新薬テオフィリンの40%。コーヒーの効果はテオフィリンには及ばないもののカフェインには勝るといった程度です。コーヒーを飲んでいる人はぜん息になりにくいという調査結果もいくつか発表されています(疫学年報 Ann Epidemiol 2:627-35, 1992)。


 これに対して、コーヒーやカフェインがぜん息に悪いという調査結果はありません。しかし現実の医療では、「ぜん息の薬を飲んでいる人はコーヒーを飲まないように」と指導されることがあるようです。はっきり言ってコーヒーが好きな人に、「飲まないように」という指導には根拠がありません。


 昔、ぜん息の人の自律神経バランスは、副交感神経≫交感神経のように傾いているので、交感神経のアドレナリンが不足して咳が出ると考えられていました。事実、アドレナリンなど交感神経を刺激する薬が使われた時代もありましたが、今は違います。


 現在のぜん息治療では、交感神経を刺激する治療法は補助的で、ステロイドを含めて抗炎症薬が主流です。コーヒーならば、炎症を抑えるカフェインが最も重要で、次にアドレナリンの効き目を強めるカフェ酸が役に立つと言えるでしょう(第13話参照)。


 もう1つ重要なことは、ぜん息はアレルギー性の病気なので、ストレスを減らして自律神経バランスを再構築することが効果的です。昔から言われている、「病は気から」という格言が最もよく当てはまる病気の1つなのです。


☆☆☆呼吸法で喘息を治すことはできませんが、せき発作の回数を減らしたり、軽くすませることは可能です。


 ぜん息の人は普段から腹式呼吸になれておくことが大切とされています。これにコーヒーのカフェインとカフェ酸の効果が加わって、いざという時に副交感神経を優位に保つバランス改善ができれば、「病は気から」の“気”の部分を最大限に取り除くことが可能です。


 ではここで、医師が勧めるぜん息予防の腹式呼吸法を引用しておきましょう。


☆☆☆腹式深呼吸


 まず、息を吸うときはおなかを膨らませて吸う。吐くときはおなかを引っ込めながらゆっくり吐く。吸う時間を1とすれば、吐く時間に3をかけて力まずゆっくり吐く。これを何回か繰り返す。普段から練習しておけば、いざという時の役に立つ。


 この呼吸法をコーヒー飲みながら練習すれば尚よい結果が生まれます。コーヒーに含まれている有効成分のパワーが加わって副交感神経が働くからです。これを自分で確かめるには、右手指で左手首の脈を数えながらやってみる。吐くときの脈の数が感じ取れるぐらい減ってくれば神経バランスの変化が確実に起こっていると言えるのです。


 以上に書きましたように、昔ぜん息に使われたカフェインの薬理学を、ストレスの多い現代社会では自律神経のヒーリングに応用できます。しかもカフェインよりもコーヒーの方が効果的です。それも浅く煎ったコーヒーがよりよく効くはずです。


☆☆☆処方箋(脱ストレス浅煎タイプ1)


シナモン/フルシティー  ブレンド比7:3


1日2〜3杯 朝昼晩


☆☆☆処方箋(脱ストレス浅煎タイプ2)


ミディウム/フレンチ   ブレンド比8:2


1日2〜3杯 朝昼晩


最後に、今日の応用編です。


☆風邪をひいて痰が絡んで仕方ないとき


 力任せに咳をしても絡んだ痰はきれません。喉の炎症が悪化するだけです。身体の力を全部抜いて、腹式深呼吸を繰り返しましょう。カフェイン(コーヒーの方が好ましい)を飲んで20〜30分経った頃が効果的です。横になってもいいし、座ったままでもかまいません。静かにして、力まずゆっくりと、時間をかけて息を吐き出すのが秘訣です。そのうち自然と痰がきれれば大成功!


 最後に、花冷えの夜桜見物は風邪のもとですよ〜!


(第14話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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