シリーズ『くすりになったコーヒー』

 第8話(2月23日)病気の手当にコーヒーがよいと書きました。全日本コーヒー協会(AJCA)のホームページを見ると、コーヒーの効き目をわかり易く解説しています。


 とは言えコーヒーの効き目は複雑で、血圧だけでも、上げる、いや下げる、飲むのを止めれば下がる、飲んだり飲まなかったりが悪い、適量を毎日飲む人は低い・・・ああもういい加減にして下さい! コーヒー飲まなくても血圧は上がったり下がったりしてますから。


 血圧はストレスと関係しています。AJCAはストレスとコーヒーの関係をどう見ているでしょうか。

 先ずは、「コーヒーの香りにリラックス効果、苦味と酸味も精神的ストレスを手軽に解消」

 次に、「コーヒーは交感神経の働きを促進して脂肪の代謝を高める(・・・のでダイエットによい)」

 なるほど納得してしまいます。でもちょっと待って下さい!


●ストレスが消えれば、交感神経が弱まって太るのでは?


●交感神経が働けば、アドレナリンが増えて高脂血症になるのでは?


 これではどっちにしてもメタボになってしまいます。一体全体、ストレスと自律神経の関係をどう説明すれば、血圧によいコーヒーを作れるでしょうか? この疑問を極める必要がありそうです。


 まず知っておくことは、自律神経には2種類あること。昼間は主にアドレナリンを出して興奮する交感神経と、夜は主にアセチルコリンを出して抑制する副交感神経が働いています。これが基本です。その上で昼と夜を規則正しく繰り返す体内時計があるのです。

●交感神経  昼を支配 アドレナリン  脳と心臓を動かす「活動の神経」


●副交感神経 夜を支配 アセチルコリン 消化吸収を促す「癒しの神経」


●あなたは交感神経型? それとも副交感神経型?


☆☆☆これを確かめる方法


 ゆっくり深く深呼吸しながら、片方の手首の脈を反対側の手指で感じて下さい。ゆっくり息を吐くとき脈がゆっくりになる人は副交感神経優位な人です。何の変化も起こらない人は交感神経が優位な人です。


 大事なのは両神経のバランスです。健康なバランスとは中国古典の「中庸のバランス」とでも言いましょうか・・・決して真ん中を意味してはいません。押せば引く、引けば押す、過不足の生じない、環境とも調和のとれたバランスという意味です。中庸のバランスとは、必要な時に必要な場所に必要な神経の力がかかるとき、人はリラックスすることを意味しています。

●バランス崩壊はシーソーゲーム


自律神経のバランスが崩れると、弱い方の神経が強くなろうと反発し、反発し過ぎて逆転します。これがシーソーゲームのように繰り返されると、ザワワザワワと絶え間ない自律神経失調になるのです。


どうしたら元に戻せるでしょうか。それにはコツがあります。


☆☆☆自律神経バランスの自己管理


自律神経は自分の意志ではどうにもなりませんが、呼吸だけが例外です。

『呼吸法 Wiki』

 そうです。深〜く深く吸い込んで、ゆる〜くゆるく全部吐き出す腹式深呼吸を繰り返すと、副交感神経優位な状態が生まれます。ザワワが消えて副交感神経のうねりが生じるのです。中国で太極拳や気功の基本は呼吸法、インドのヨーガも呼吸法が中心です。


☆☆☆“コーヒー深呼吸”で相乗効果


 コーヒーを飲んで深呼吸をしてみましょう。おなかを膨らませて吸い込んで、お腹を凹ませてゆっくり吐く。それだけで血圧は下がり、とてもリラックスできるはずです。5回か10回繰り返せば、息を吐くときの脈拍が少なくなるのがわかります。香りを一緒に吸い込めばさらに効果が高まります。


 念のためですが、深呼吸は10回までにしておきましょう。副交感神経が強くなり過ぎると、敏感な人は下痢を起こしたり花粉症がひどくなったりしますから、この時期ちょっとまずいです。


 それでは次回までに、1日1回はコーヒー深呼吸を体験して下さい。


(第11話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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