「第9話 コーヒー深呼吸(その1)」に、うつ病を予防するコーヒーの話を書きました。今日は「実際にうつ病のくすりを飲んでいる人」のために補足します。

 よく「コーヒーはうつ病に悪い」と言われていますが、何が悪いかと言いますと、うつ病のくすりとコーヒーを両方飲んでいると、1日にコーヒー1杯しか飲まなくても、2〜5杯ぐらい飲んだのと同じカフェインの効果が出るからです。

 これは本当の話です。ただし、うつ病のくすりが全部そうだという話は間違いです。危ないのは“フルボキサミン”というくすりだけで、もっと具体的には、商品名“デプロメール(明治製菓)”と“ルボックス(ソルベイ−アステラス)”の場合だけです(→詳しく知りたい人は、「カフェイン もうドーピングなどとはいわせない」)。

 この2つのくすり以外は、可哀そうにどれもみんな濡れ衣です。こんな汚名を晴らすため、コーヒーを飲んでいても問題ない抗うつ薬の名前も書きたいのですが、余りに数が多いので・・・でもやはり書いておくことにします。

●コーヒーを飲んでもカフェインの副作用を心配しないですむ抗うつ薬のリスト

トリプタノール、アモキサン、イミドール、トフラニール、アナフラニール、プロチアデン、スルモンチール、ノリトレン、アンプリット、テシプール、ルジオミール、テトラミド、ジェイゾロフト、パキシル、トレドミン、デジレル、レスリン、及びこれらのジェネリック医薬品、以上です。

 というわけですから、このリストのくすりを飲んでいる人は、コーヒーを飲んでもいい人なのです。もし飲みたいコーヒーを止めているなら、お医者さんに相談してみては如何でしょうか?

☆☆☆抗うつ薬とカフェインの相互作用が心配な医療者の方へ

 相互作用の原因はCYP1A2阻害作用によるカフェインAUCの増大です。CYP1A2を阻害する抗うつ薬はフルボキサミンだけですから、その他の抗うつ薬でカフェイン血中濃度が安全範囲を超えるという心配はまずありません。


(第9話の追補 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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