去る6月5日、本来は神保町/学士会館で開催される総会が、またまたZoom開催となりました。今年は役員交代ということで、筆者は副会長を卒業して平会員に戻りました。この間に、NHKディレクターのご意見もいただいて、浅煎り+深煎りの「いいとこ取りブレンド」を完成さて、ご先祖様から頂いた名前を、今度はNHKさんから頂いて、「希太郎ブレンド」と名づけました。「コーヒーと健康」の普及活動にとって、意味ある副会長時代、ご協力いただいた皆さんにこの場を借りてお礼申し上げます。
全国ネットのTVからも色々お誘いを頂きました。写真は、NHK・BSプレミアム(収録中に「希太郎ブレンド」と名づけられた)、同じくあさイチ(本番中に華丸さんが「希太郎ブレンド」を連呼した)、フジTVバイキング(IKKOさんから記念のしおりを貰いました)などなどでした。
さて、役員交代で前会長となった廣瀬幸雄さん(イグノーベル賞受賞者)と、初の女性会長に就任した井谷善恵さん(東京芸大特任)の記念公演を拝聴したので、骨子を報告します。
●新会長 井谷善恵さんの講演「世界の海の安全はロイズ・コーヒーハウスから」
コーヒーがヨーロッパにもち込まれて間もない1652年、ロンドンで初のコーヒーハウス“パスカ・ロセ”が開業しました。街角の写真は現在の建物ですが、当時の繁華街を想わせる風情が残っているようです。正面の「記念碑」に「ロンドンで初の店」と書いてありますが、当時の街の名は「コーンヒル」でした。最初の店が繁盛するのを見て、あっという間に、それまでは酒場だった店を中心に3,000店舗がコーヒーハウスに改装されたそうです。このときから「お酒の後のコーヒーが身体に良い」とか、「いや飲む前に飲め」とかが流行語になったのです(筆者の加筆)。右端の写真は、初代店主がオックスフォード大学総長ウイリアム・ハーベーから聞いた「コーヒーの功徳」を宣伝用のビラに印刷したもので、今も大英博物館に残っているそうです(詳しくは → こちら)。
この話は講演のほんの一部ですが、かくして17世紀半ばからロンドンのコーヒーハウスで毎夜のように繰り広げられたバカ騒ぎの中から、後に英国の大繁栄に繋がるロイズ海上保険組合が誕生したり、大航海時代後の大英帝国大発展に繋がったという壮大なお話でした。
●次は前会長 廣瀬幸雄さんの講演「コーヒーの健康に関する新しい考え方」
何時ものことですが、色んなことを独特の早口で話すので、ややもするとチンプンカンになってしまいます。今回の講演内容はご自身の後半生の発明についてでした。誰が見ても一番光っているのは「水素焙煎」で、「焼き上がった焙煎豆に水素が含まれている」というのが味噌になっている話です。ですから、健康に役立つ水素コーヒーとして応用できる・・・ということなのです。
事実今世紀になって、水素ガスや水素水などの医学論文が増え続けて、最近は総説論文も出てきました。最初は呼吸器疾患に有効とのデータが中心でしたが、最近は炎症性疾患全般に及んでいて、アルツハイマー病のモデルマウスに使う研究も始まっています。ですから、広瀬さんの「新しい考え方」の中味は、「病気の治療に使える水素を、水素を燃やした熱でコーヒー豆を焙煎して、豆に水素を閉じ込めて活用する」という誰もやったことのない新技術のことなのです。
しかし広瀬さんは、水素コーヒー豆を作る話ではなく、「水素が健康に良い」という薬理作用を話したくて仕方ない様子でした。ですから使ったスライドのなかで一番長く説明していたのは上の図の1枚で、中身は水素焙煎のことではなく、水素分子(H2)がなくても血管の中で水素イオン(H+)ができること、もしそこに水素分子があればもっと早く水素イオンができること、そして、それが身体に良いことをしてくれるのだと、一生懸命に説明したのです。筆者は妙な流れだなと感じてしまいました。
もし水素イオンがそんなに良いものならば、お酢を飲めば良いのです。でも、お酢で肺炎が治りますか?お酢でがんが治りますか?廣瀬さんが知らないわけはありません。では何故「水素イオンが効く」などという話をしたのでしょうか?広瀬さん自身の説明によれば、知り合いの誰かが「水素分子なんか効くわけはない、水素イオンが効いているのだ」と言ったので、その人を納得させるために「水素分子があれば水素イオン(スライドの赤字)が速くできる」ことを証明したかったというのです。筆者はZoomの画面を見ながら固まってしまいました。
最後に筆者の脳裏に残った廣瀬さんの話は、「水素焙煎は危険だから自分以外の人にやって貰うわけには行かない」ということでした。でも、普通の科学者が新発見をすると、「早く誰かが追試験をして、自分が正しいことを証明して欲しい」と思うものです。廣瀬さんはそんな普通の科学者ではないようです・・・ということで、兎も角記念講演は終わりました。Zoomであるために、筆者は何も質問せずに終わりました。ご健勝を祈ります。
(第474話 完)