話題の新型コロナ治療薬候補ゾコーバが承認見送りになったその日のNature誌電子版にこんな記事が載っていました。


●軽症COVID-19治療薬とは、リスクが低い薬のことで、世界中の創薬研究者が狙っている(詳しくは → こちら )。

 軽症の患者が近くのクリニックか薬局で買えて、それを飲んで自宅で静養できるような薬が期待されているのです。でもそれがなかなか出来ません。臨床試験でのリスク調査には、試験期間の限界、限られた人数の被験者、等々の制限があるので簡単ではありません。有効性のデータが出ても安全性は未知のままで審査請求がなされます。緊急時の特例というのはこの辺りを指していると思うのですが、ゾコーバの場合は「有効性を示すデータが不足(新聞による)」とのことなので、新薬としては失格でしょう。

 TVを見ていると見慣れた専門家が「発熱外来を受診して、検査を受けて、陽性だったら処方箋が出ます」と言っています。でもこれはそう簡単なことではありません。第一に、行列が出来ていること。第二に、検査結果が出るまで3日は掛かること。そしてその間に何をするか、TVは何も教えてくれません。患者は自宅で右往左往するだけです。

 ごくごく最近になって「クリニックで診て貰えないときは、町の薬局で、熱冷まし、痛み止め、咳止めなどを買って、安静にしていましょう」と話す解説者が現れました。常連の専門家ではなく、街中の発熱外来のお医者さんが、いわば対症療法薬を勧めているのです。何もせずに家でじっとしているよりは、これを飲んで楽になる人も多いのです。しかし、大事なことは「症状が消えてもウイルスが消えるまでには更に数日かかる」ということで、自宅待機が求められます。ですから、インフルエンザのタミフルのような特効薬がコロナにも期待されているのです。

 兎にも角にもこんな状況ですから、ビタミン剤やミネラルを食事から、あるいは大衆薬から、免疫力強化のために積極的に摂ったら良い、と思うのです。筆者はコーヒーとビタミンB3、中でも特にニコチン酸を勧めてきました。世界では、幾つかの医療機関が早くから「咳が出たらニコチン酸」と呼び掛けていました。それでNADが出来れば、自然免疫力強化や、もしかしたら後遺症の予防にも繋がる可能性があるからです。


●新型コロナにコーヒーが良いという直接的なデータはなかなか出てこなかった。

 仕方なく筆者は、ニコチン酸を飲めばNADが出来て、それが自然免疫力を高めてくれる・・・などという遠回しの薬理学での説明しかできませんでした。ところが今からちょうど1年前、「コーヒーを飲んでいる人はCOVID-19に罹るリスクが10%程度低くなる」という、暗闇に微かな光を灯すような論文が出ていたのです(詳しくは → こちら)。

 表1がこの論文のデータです。英国バイオバンク37,988人(40-70才)を対象に、COVID-19診断の有無と食生活の関係を調査した結果です。唯一有意差が認められた飲食物はコーヒーで、1日2杯以上の群の罹患リスクが0.91に下がりました(p=0.025)。その他の食品(加工肉、赤色肉、果実、野菜)の摂取量はどれも罹患リスクと無関係でした。そこで、筆者の考えでは、コーヒーの関与成分(表2)の含有量を最適化して、例えば希太郎ブレンド®のようなコーヒーを飲めば、更なるリスク低下が起こるはずで、これを対症療法薬と併せて飲めば、コーヒーがアジュバントとなって、一層確実な効き目が表れると期待できるのです(詳しくは → こちら)。ちなみに、表2の①の作用は、ゾコーバが示す薬理作用と同じです。つまり、「コーヒーはゾコーバ程度には効く」ということなのです。



 次に、表1のデータを発表した同じグループが、英国バイオバンクの解析対象者の人数を25%増の47万人にして解析しました(詳しくは → こちら)。その結果、全体の4.0%が肺炎、0.2%がインフルエンザに罹りました。調査開始時点でコーヒーを1-3杯飲んでいた群は6-9%、お茶>1杯の群は8-11%、多めの青魚群は10-12%、多めの果実群は9-14%の肺炎リスク低下を示しました(p≦0.001)。中でもコーヒーは表1のようにCOVID-19 を含めた肺感染症と関係していましたが、他の食品群ではCOVID-19のリスクには影響を与えませんでした。つまり、新型コロナ感染症を予防したのはコーヒーだけだったということです。

 上記の2つの論文の結論を図1にまとめました。論文の著者は、青色魚と野菜と果実を多目に摂って、肉は少な目として、食後には1日数杯のお茶とコーヒーを飲むことを推奨しています。



●コーヒーノキの葉にアルコールより強いコロナ消毒作用発見!

 さて、焙煎コーヒーの関与成分を最大量としてコーヒーを淹れるには、希太郎ブレンド®のように深煎りと浅煎りの豆をブレンドすることが大事です。そうすれば表2のような関与成分を全て同時に摂ることができるからです。表2の①の成分は、塩野義が開発中のゾコーバのメカニズムと同じです。成分②は、感染後の免疫/炎症反応を抑制するはずの成分で、③は自然免疫力アップに最も期待されているNADの前駆体ビタミンです。これら①~③を全て摂ることで最も強い抗新型コロナ作用が期待できるはずなのです。しかし、新型コロナウイルスに対して抗ウイルス作用が確実に期待できる成分はカフェインとクロロゲン酸だけで、残念ながら決して強い作用とは言えません。ところが、ごく最近(本年7月)になって、状況が変わるかも知れない援軍が発表されました。新たな抗ウイルス性成分がコーヒーノキの葉から発見されたのです(詳しくは → こちら)。



 先ずは図2をご覧ください。SARS-CoV-2オミクロン変異株のウイルス粒子表面の構造を真似て作った人工ウイルスを、2種類のヒト細胞に感染させた実験です。これらのヒト細胞の表面には、ウイルス受容体ACE2が発現しています。培養液に加えるコーヒーノキの葉の乾燥抽出エキスを、20μgと100μgに変えて添加する実験を行って、ヒト細胞に取り込まれたウイルスの数を数えて、感染率を割り出しました。健康な腎臓の細胞と肺がん細胞のどちらもが、エキスの濃度を上げると感染率が下がることが解ったのです。


●コーヒーノキの葉の抽出液は、75% エタノールよりも強力に、SARS-CoV-2の細胞への侵入を阻害した。

 人工的な皮膚を使った実験なので、実際にどの程度の効き目なのかは疑問ですが、論文の著者らはエタノールより強いと主張しています。では、図2の感染率低下の効果を発揮しているコーヒーノキの葉の成分は何なのでしょうか?1つ1つ調べてみた結果、図3に示すように、マンギフェリン、クロロゲン酸、カフェイン、およびキナ酸の4つが効果を示していたのです(図3)。


●コーヒーノキの葉の成分分析(詳しくは → こちら)。



 表3は、図3で効果を示したコーヒーノキの成分を、植物の各部分に分けて分析したデータです。カフェインは種子(豆)と葉に多く、トリゴネリンとクロロゲン酸は全体に含まれ、そしてマンギフェリンは葉だけに含まれています。ここには書かれていませんが、マンギフェリンは果皮にも含まれているとのことです(詳しくは → こちら)。しかし、種子を焙煎して淹れる飲み物としてのコーヒーにはマンギフェリンはほとんど含まれていません。

 ということですから、コーヒーノキの葉の抽出液は、消毒剤や外用のうがい薬として役に立つと思われます。


●まとめ

 コーヒーがCOVID-19に罹るリスクを下げるとの疫学データは、数値的には弱い効果ですが、図3で感染率を下げるとの成分解析を参照すれば、市販コーヒーのポリフェノール含有量では不十分で、改善の余地があるのです。現在、世界の人々が飲んでいるコーヒーは、ほぼ例外なくポリフェノールが分解過程に入った状態、または更に分解が進んでほぼ消失する状態まで深く焙煎されたコーヒーです。そこで表2に示す「希太郎ブレンド®」を飲むことで、コーヒーとしての風味を維持しながら、ポリフェノール含有量を増量することができるのです。「希太郎ブレンド®」にマンギフェリンは入っていませんが、それでもその他の高濃度の関与成分がマンギフェリンを代替して、COVID-19の感染リスクを下げるものと期待できますし、ニコチン酸の存在がまた別の魅力になっているのです。


(第478話 完)