コーヒーもお茶もどちらも身体に良いに間違いありません。しかし、2つをどう飲むかについては、昔からの習慣に倣う以外ありません。疫学研究のなかに、「コーヒーは食事と合せて効果を発揮する」との論文が、地中海食と日本食で出ています。しかし、その他の地域でも、「コーヒーを飲んでいると寿命が延びる」という論文が多数出ていますから、地中海食と日本食だけが優れている訳ではないのです。世界中で共通して言えることは、「身体に良い食事にコーヒーは欠かせない」ということです(詳しくは → 第461話)。
ではお茶はどうかと言いますと、疫学研究では「コーヒーとお茶は両方飲んでより効果的である」との論文が複数出ています。ごく最近の一編を紹介します(詳しくは → こちら)。この論文はマウスの実験ですが、これまでに発表されている疫学研究データを念頭に、そのメカニズムの解明を目的とした研究です(図1)。結果は、お茶とコーヒーのポリフェノールが共同して腸内菌叢を修飾することで、腸管細胞の酸化ストレスを和らげて、抗炎症作用を発現するという結論になっています。この論文には、これがヒトにも当てはまるか否かについては書いてありません。
お茶とコーヒーを両方飲む習慣が体脂肪の燃焼を刺激することについては、以前から花王㈱が研究してきました。次に紹介するのは同社が商品化にこぎつけたヘルシア缶コーヒーと緑茶の関与成分の組み合わせで、ホームページで紹介しています(詳しくは → こちら)。それが最近になって、脂肪燃焼だけでなく、食後の血糖値、インスリン、および消化管ホルモン分泌にも好ましい効果を発揮していると論文発表したところです(詳しくは → こちら)。
図2は、以前から花王㈱のホームページに載っているコーヒーのクロロゲン酸と緑茶のエピガロカテキンが示す脂肪燃焼のメカニズムです。
この図の根拠となった実験は、同社が今世紀になって精力的に行ってきたもので、既に多くの論文に発表されています。簡単に言えば「血中脂肪酸をミトコンドリアに取り込んで(A)、それを燃焼して(B)、過剰な脂肪を減らして熱に変える工程を、コーヒーと緑茶の主成分が共同して実現している」ということです。そして今年、同社が発表した新しい論文は、このメカニズムとは異なる経路で、コーヒーと緑茶が糖尿病を予防することを示しています。つまり、糖尿病予防の作用メカニズムは複数の薬理作用から成り立っているのです。いわばそれらの相乗効果でもあるのです。
更に海外の論文に目を向けると、コーヒーとお茶の共同作用は、糖尿病を予防するだけでなく、心臓病や腎臓病の予防にも役立っていますし、冒頭に書いた腸内菌を介する作用は、腸-脳関連を通して脳神経疾患に関与していると示唆しています。このような科学の新知見がNature誌などの著名な学術誌に掲載されるようになってきました。今後の研究課題として大いに期待できる分野だと思われます。
●コーヒーとお茶は薬食同源の、健康にとって最も効率的な飲み物として、世界が認める時代になってきました。
(第495話 完)