■タムガイド®開発の道のり

―タムガイド®開発の契機は臨床ニーズか。

 ある大学の先生からのご要望がきっかけです。2018年12月の日本内視鏡外科学会で、医工連携展示の当社ブースに外径1mm、2mmといった非常に細い内視鏡を展示していたところ、「栄養チューブには大きな問題がある。君のところの技術でなんとか解決できないか」というご相談があったのです。「栄養チューブを使うときの事故を防ぎたい」「機器自体はシンプルで、安くて、チューブの先端位置が確実に視認できるもの、かつ、持ち運びできる小型ものをつくってほしい」とのことでした。


―完成した製品はまさにシンプルだが、この会社だからこそ実現できたというポイントは。

 生体透過光を使うというアイディアと、光源装置に用いた集光技術の2点です(図)

 30年近く内視鏡に取り組んできた(三池氏の)経験から、光ファイバー先端の光を皮膚から透過させられればチューブが胃に到達したことを示せるのではないかと考えました。ヒト組織を透過し得る光について調査した結果、特異的に生体を透過しやすい光の領域があることを知りました。「生体の窓(biological window)」と呼ばれる近赤外光領域(波長650~950nm)です。この領域のさまざまな波長の光が食肉を透過するかどうか実験したところ、最も効果的な波長では5cmの厚みがある牛肉を通しても光がはっきり見えることがわかりました。

 ただ、この波長でも光が体外から見えるようにするにはまず、通常は拡散するLED光源の光を効率的に光ファイバーに通す必要があります。そこで約1mmのビームになる特殊なコンデンサーレンズを開発しました。これに約1年を要しました。さらに光ファイバーの先端が胃に着いた後には、ファイバーの位置にかかわらず光が体外から確実に見えるよう全方向に拡散させるようにしました。トータルで3年かかりましたが、要望に応えられる製品を開発できました。


―国内外にコンペティターはいないのか。タムガイド®に残されている改善点は。

 いないですね、同じ技術では。米国に2社ほど、同じ課題を1社は内視鏡、1社は磁気で解決しようというスタートアップはあります。ただ、高価なんですよね。栄養チューブは100円、200円といった価格帯なので、そこに何十万円という機械を使うことは現実的ではありません。

 タムガイド®ファイバーは、臨床で使用される最も細い栄養チューブでも対応できるものも開発したので、現状では特に今後改善すべき点は見当たりません。