質の担保は和食にあり
カギとなるのが来年4月に鶴岡市に開設予定の「献便施設」。住民らを対象に、気軽に用を足してもらう施設をめざす。「通いたくなるトイレがコンセプト。MGTxの顔になる」(中原社長)ため、おしゃれなデザインとする。献便者の徹底的なスクリーニングによって安全性を担保するとともに、同施設で前処理までできるようにする。
多くの便を集めるには都会に設置するのが効率的だが、これまでの経験上、「分母が多ければ良いわけではない」と中原社長は指摘する。いかに良い腸内環境を持つ人から得るかが大切で、その際、和食がキーワードになるそうだ。奇しくも鶴岡は14年に「ユネスコ食文化創造都市」に認定され、食文化が豊かな土地だ。昔ながらの和食が腸内環境に良いとされるなか、“質の高い”うんちを集めやすいと睨む。
海外を見渡すと、米国や欧州では移植片対宿主病(GVHD)や肝硬変などを対象にFMT療法の開発が活発化しており、裾野が広がっている。中原社長は、「将来、FMT療法の市場が世界で1兆円規模になる可能性を秘めている」と語る。便医薬品に関しても昨年には米国食品医薬品局(FDA)が初めて承認するなど、地歩を築きつつあることも追い風となる。
現状、MGTxも含め、主立ったFMT療法への参入者は「ローカルでの事業活動に止まっている」(中原社長)といい、市場を独占するようなグローバルプレーヤーはまだいない。
「日本の良い食事からできた日本人の便から良い“くすり”をつくり、勝負したい」と語る中原社長。MGTxはうんちで天下を取りに行く。