就任1ヵ月で機能不全に陥った 


日医は運が良かった?


 今夏の参院選までの命運なのか、もっと早いのか、奇跡の支持率回復で延命するのか、石破政権の前途は見えないが、医療・医薬品関係の施策はどうなるのか。


 与党過半数割れの世論調査報道に続き、裏金問題で非公認となった候補者の政党支部に2000万円を送ったと報じた共産党機関紙「赤旗」の暴露により、惨敗が決定的となった10月25日、医療団体関係者はこう呟いた。


「診療報酬改定議論が今年じゃなくてよかった。どう転ぶかわからなくなっていた」


 24年度診療報酬「技術料」の改定率は0・88%。看護師や病院薬剤師などへの賃上げ、生活習慣病指導関連の報酬の実質引き下げなどを除いても0・46%のプラスだった。改定率が決定した23年12月の岸田政権の支持率は23%(NHK)と低空飛行だったが、衆参で磐石の議席数に加え、岸田前首相に表立って反発する勢力もなく乗り切った。日本医師会内でも、岸田政権の対応を非難する声は少なかった。


 しかし、もしこの衆院選直後から改定議論を進められたら、どうなっていたか。「看護師などの賃上げに関しては与野党一致しても、日医の母体である開業医の報酬は削られたのではないかとの思いは拭えない」(日医関係者)。民主党政権時代、日医は自民党との癒着を批判され、中央社会保険医療協議会の委員から外されるなど辛酸を舐めた。民主党は立憲民主党と国民民主党に割れたが、安倍晋三政権時代の安倍前首相、麻生太郎元財務相と日医の横倉義武前会長の蜜月関係は知れ渡っていた。


「妬みの世界」である政界で、安倍氏に悪夢とまで罵られた旧民主党側が、安倍氏と懇意にしていた日医に対し、陰に陽に報復措置をとることは想像に難くない。石破政権が秋波を送るとされる国民民主党などの影響力を避けられた日医は運がよかったかもしれない。


 医薬品業界はどうか。厚労関係議員の当落は別稿(68〜69頁)に譲るが、当面は財務省と厚生労働省の折衝で決まっていくとみられる。承認の早期化などは進みやすいが、中間年改定の廃止は困難だ。製薬関連の労組も支援する国民民主党が組んだとしても、焦点になりようもない。薬剤費負担について、新薬のためなら増えてもいいと思う人など皆無である。