「ぜひ松本純に力を貸してやってください」


 10月26日夜、横浜・桜木町駅前で“弟分”のために声を枯らして訴えたのは、自民党最高顧問で元首相の麻生太郎氏(福岡8区)だった。衆院選最終日、マイク納めにあたり、返り咲きを狙った薬剤師の松本純氏(神奈川1区)の応援に駆け付けた。


「投票箱が閉まるまで、執念を持って、松本、松本、松本、松本純をよろしくお願いします」


 10月23日夕には、横浜市議時代から共に歩んできた、党副総裁で元首相の菅義偉氏(神奈川2区)が、雨交じりの悪天候のなか、杉田駅から新杉田駅の商店街を歩き、松本氏への投票を呼び掛けた。


 麻生氏と菅氏。石破政権の誕生の際、キングメーカー争いを演じた自民党の重鎮2人から、直接的な後押しを受けた松本氏だが、立憲民主党の前職に完敗した。


警戒用テープをつかみながら商店街を歩く菅義偉氏


妻自見英子氏とともに頭を下げる橋本岳氏


 同じく薬剤師で自民党元職の渡嘉敷奈緒美氏(大阪7区)も、復活を期して臨んだが、落選した。勢いは鈍ったものの、大阪では日本維新の会が府内19選挙区で全勝。渡嘉敷氏も大差をつけられた。


 大阪府薬剤師連盟の乾英夫会長(大阪府薬会長)は「最悪、比例代表で復活当選という感触はあったのだが、大きな風に勝てなかった。残念としか言いようがない」と悔しさを滲ませた。医薬品の供給不足問題に終わりが見えないなか、自民・公明両党で薬剤師資格を持つ衆院議員が「不在」という状況は、今後も続くことになった。


 一方、厚生労働関係であっても閣僚経験を持つベテランは、安定的な戦いを見せた。党総裁選にも出馬した財務相の加藤勝信氏(岡山3区)、元厚労相で厚労分野全般に精通する田村憲久氏(三重1区)、前財務相で党総務会長の鈴木俊一氏(岩手2区)、元厚労相で税制にも強い後藤茂之氏(長野4区)は圧勝した。元厚労副大臣の古賀篤氏(福岡3区)、医師の今枝宗一郎氏(愛知14区)らは、他の候補を寄せつけなかった。元厚労部会長で医薬品業界に支援者の多い田畑裕明氏(富山1区)は、比例重複なしで小選挙区のみの戦いとなったが、辛勝した。


 元厚労省課長補佐の国光文乃氏(茨城6区)、全日本病院協会副会長で医師の安藤高夫氏(東京28区)、党厚労部会長を務める大串正樹氏(兵庫6区)は、小選挙区で敗れたものの、惜敗率の高さから比例復活当選で議員バッジを手にした。