前回は関西空港からプラハまでの飛行機での空飛ぶ車椅子の体験を記した。今回はプラハ空港に着いてから市内を散策するまでを書いてみたい。プラハは公共交通が充実しており、トラム、地下鉄、バスが網羅的に市内をカバーしているが、現時点ではプラハ空港から市内まではバスしかなく、初見で電動車椅子を使っての移動を試すのにはちょっと勇気があった。ひとまずホテルまでは事前に予約した福祉タクシーを使うことにした。
チェコでは外国人向けの福祉タクシーを利用できる選択肢は限られている。チェコ人の友人がいくつかの事業者とやりとりをしてようやく手配できた車両は日本の福祉タクシーに似た仕様で、車椅子をスロープでワゴン車の荷物スペースに乗せ込んで4点で固定するタイプだった。ただ、日本の福祉車両と同じで車椅子に乗ったままでは外の景色を楽しむことが難しい。リハビリが進み、いつかは通常の座席に移れるようになると、ドライブの楽しみも広がるだろう。
プラハ中心部に近づくと、プラハ城やカレル橋などの歴史的建造物に代表される中世の欧州の街並みに変わっていき、白と赤のトラムがひっきりなしに往来する光景が広がる。ホテルは、旧市街広場やヴァーツラフ広場といった有名な観光名所がある旧市街の端にあった。ホテル到着後、早速外に出てみた。旧市街地区はインスタ映えのするアールヌーボー様式の一つひとつの建物と街並み全体の雰囲気をうまくつくり出す石畳で覆われた通りで飾られており、散策する人々の心を捉えて止まない。
そして、車椅子もしっかりと石畳の轍に絡め取られる。石の大きさが10センチから20センチの石畳の上では、車椅子がガタガタと揺れ、石畳の溝に車輪がはまったり滑ってしまうこともある。舗装されていない道路を疾走する4WDのオフロード車の助手席に乗る感覚と言えば伝わるだろうか。道がうねるように凹凸しているため、段差の衝撃を受けるたびに、足の痙縮が何度も起きて、足が車椅子のフットレストから落ちそうになる。石畳からの振動から来る疲労に耐えながら進むことは、普段何気なく歩ける人々にとっては想像しにくいかもしれない。とはいえ、数年ぶりにプラハに戻ってくることも嬉しいことだ。