患者会運動の意義を強調


 第1は、被告である河内教授らの側が主張した「治療ユニット」の存在を認めなかったことである。


 第2は、治療ユニット形成論の根拠のひとつであった、成田医師の前立腺癌小線源治療学講座併任准教授就任を岡本医師も事前に了承していたことを示す証拠として被告側が提出した文書が偽造であると認めたことである。


 第3は、成田医師の小線源治療実施第1例になるはずだった患者(Fさん)に1例目であると説明したから、いずれ原告ら4人の患者にも説明する予定であったという被告側の主張を退け、成田医師はFさんに1例目であることを説明していないと認定したことである。


 第4は、小線源治療において泌尿器科医にはとくに高度な手技は必要ないとした放射線科の河野直明医師の証言や、岡本医師の手技について参考程度に参照したにすぎないとした成田医師の証言の信用性を否定したことである。


 第5は、岡本医師の小線源治療は医療水準として確立されていないと主張する被告側がその主張の根拠として提出した「事例調査検討委員会報告書」について、「報告書自体が一定の根拠を伴って具体的な検証内容を示すものではない」などを理由に被告側の主張を退け、岡本医師の小線源治療は「医療水準として確立されている」と認定したことである。


 大津地裁判決を受け、弁護団は控訴の所見(20年4月16日付)をまとめ、原告に示した。同所見は、①学長や病院長まで証言台に立たされ、裁判所から文書偽造やカルテの虚偽記載の事実が認定され、証言の信用性も否定されたから、被告側が負った傷は決して小さくはない、②患者会の運動全体を振り返ると、仮処分によって約50名の患者の命を救ったという事実は成果として誇ることができる、と裁判やそれを支援した患者会の運動の意義を強調したものだった。


 原告はいずれも控訴せず、説明義務違反訴訟は終わった。