▽民間保険メディケア・アドバンテージ(MA)は受給者の54%をカバーするまでに急成長した
▽MAフォー・オールはどうか? 競争入札に基づく支払いが前提なら保険業界は拒みたい
公的保険に一本化した皆保険は民主党リベラル派(プログレッシブ)の長年の「理想」だ。だが、2010年オバマケア(ACA)の準皆保険プログラムは規制的枠組み、補助付き民間プランを採用した。オバマケアに見放され失った勢いに、この数年、民主社会主義者バーニー・サンダース上院議員が息を吹き込んできた。「メディケア・フォー・オール」はわかりやすい例である。
2000年代、共和党政権・議会が保険業界の不満を吸収するかたちで整えられ動き出した民間保険のメディケア・アドバンテージ(MA)。MAフォー・オールは公的一本化に対抗する政策軸だ。「大きな政府」の象徴を民営化によって一新する保守派の目標から、受給者の過半数(54%)を惹きつける成長によって、合意しやすい現実的構想として浮上してきた。
高齢者・障害者向け公的保険内の改革を超えて、プログラムの基本を援用し、米国医療保険制度の包括的な改革を訴える構想(表1①−④)もある。
あくまで医療政策専門家レベルの関心である、当面は切迫した政治課題になる気配はない。
党派対立が激しい米国政治は、メディケアを直視したくない。共和党にとってもはや解決すべき「大きな政府」のイデオロギー的な標的の位置取りにない(表5−②)。高齢者の怒りを買いたくない。大統領候補も言及しない(表3−③)。
受給者数は2010〜20〜30年代に2.8%、2%、1%弱に鈍化が予測され、しかも2010年代は専門家もいぶかる稀なメディケア医療費の安定期、2020年代は薬剤費抑制が続く。米国医療の特異さだが、就業層1対高齢者比率は2022年の2.9から2029年2.5に、21世紀半ばには2近くに下がる。
公的プログラムにおける「価値に基づいたケア」、出来高払いからキャピテーション、症例単位包括支払いへのシフトも変化要因であり、当面は財政対策の要請が緩和されている。
政治が火の粉をかぶる覚悟を決めるのは、メディケア信託基金が「数年先に支払い不能」を報告するときだが、保険会社にとってメディケア・ビジネスの絶頂期は過ぎた。タイミングが悪い。
2年前、企業契約については撤退し、メディケイドを含む公的領域集中に舵を切ったヒューマナは来年のMA展開の縮小再編を決めた。連邦支払いの抑制、増収策アップコードに対する監視と返還請求の稼働が5%の収益率を脅かしている。しかしMAプランはどう打開に動けるのか?
1990年代末のビジネス縮小の「抗議」は政治から改善を引き出したが、受給者の過半数をカバーする成長が所要予算の確保を難しくしている。