「費用対効果評価制度は、あくまでも薬価制度を補完するもの」


 製薬業界は現状維持を望み、そう主張しつづけているものの、関連する動きからは、政府が費用対効果評価をこれまで以上に活用したい意向であることは明白だ。6月に策定された政府「骨太の方針2024」には、次のような記載がある。


「費用対効果評価のさらなる活用の在り方について、医薬品の革新性の適切な評価も含め、検討する」


 また、5月にまとめられた財政制度等審議会の建議には、より具体的な方向性が掲げられている。


「費用対効果評価を実施する薬剤の範囲や価格調整対象範囲を拡大するとともに、費用対効果評価を実施している他国の例も踏まえ、評価結果を保険償還の可否の判断にも用いることも検討すべき」


 中央社会保険医療協議会を舞台にした24年度の制度改革でも、引き下げを念頭に置いた「価格調整範囲拡大」が論点になった。それまで価格調整範囲は、薬価収載時の有用性系加算部分に限定されてきたが「高額医薬品に対するより積極的な制度活用」が謳われた。


 薬価本体部分まで拡大することを視野に入れた議論が繰り広げられ、これに対して、製薬業界は「薬価本体に切り込むことは薬価算定時のイノベーションの否定だ」と猛反発。最終的に24年度改革での価格調整範囲拡大は見送られた。


 一難去って、次の改革時期は26年度となるはずだが、今年の骨太方針でも、財政審建議でも、費用対効果評価の積極活用方針が、強いトーンで打ち出されている。


 それだけでなく、制度の「例外を増やす」という別のアプローチからも、費用対効果評価の活用が拡大し、価格調整範囲が薬価本体に割り込む懸念が生じている。


 9月、日本イーライリリーの早期アルツハイマー病(AD)治療薬「ケサンラ」が承認された。アミロイドβを標的としたAD薬としてはエーザイの「レケンビ」に次ぎ、国内で2番目。ケサンラは、薬価収載に向けて「高額薬対応」が取られることが決まった。高額薬対応とは次のようなものだ。