10月1日から長期収載品(後発品のある先発品)を選択した場合に、選定療養費の対象となり、患者さんが追加負担をする制度が実施された。しかし、患者さんはおろか、医師にもまだ十分に浸透・理解されている状態ではない。10月になって来局し、選定療養費制度による新たな負担が発生するとの内容を初めて聞く患者さんが多かったのが実情だ。
患者さんに、この制度の説明をするのは、ほぼ調剤薬局の薬剤師である。そもそもクリニックなどの先生方は比較的関心が薄い問題だった。一方、調剤薬局の都合、患者さんが後発品を希望したとしても、後発品の確保が困難な昨今、どうしても製薬企業への確認が必要になる。
しかし、調剤薬局では選定療養費制度に対応すべき後発品を入荷できておらず、やむ得ず薬局都合で長期収載品の調剤になるケースも多々あり、現在のところ、後発品の見通しが立っていない製品も多いのが事実だ。在庫がなく入手困難という薬局都合の場合は、長期収載品を使っても患者さんの負担は発生しないようだ。
もうひとつ現場での問題を紹介する。かかりつけ薬剤師指導料である。算定するには患者さんの同意が必要となるが、費用がかかることを理由に断られるケースにも直面している。実際、1回の調剤ごとに76点(760円)が上乗せされるため、100円程度のコストを患者が支払うことになる。ただ、患者さんは24時間連絡ができるし、薬剤師側にとっても基本は注意を要する患者には時間をかけて説明している。ただ、なかなかそのメリットが双方に伝わっていないのが現状だ。
現場がこのような対応を行っているなか、日本薬剤師会学術大会が9月22〜23日、さいたま市で開催された。私も参加したのだが、これまで限定的な役割しか期待されていなかった薬剤師の機能がさらに大きくなり、広範囲かつ細分化されていることを実感した。薬剤師の将来像は、実務的には機能の「集中と選択」が大事だと思う。学術大会の発表内容を見聞きしたことについて、重要なポイントを整理してしばらく考察する。
現在の薬学生に少しでも自身の将来像を描ける参考になればと思っている。
まずは今後の薬剤師の期待される役割をいくつかに分類してみる。
・患者フォローアップにおけるDX活用など新しいデジタルの分野
・外来抗がん剤治療に貢献できる薬薬連携とトレーシングレポートの実践
・地域フォーミュラリーとアカデミックディテーリングの可能性
・高齢化在宅医療へのシフトへ対応できる薬剤師の役割将来における薬剤師の頑張り
論文発表数などは医師とは比べ物にならないし、各課題の事例共有も少ない。諸外国と比較すれば薬剤師の地位も限定されたものであるが、若い世代の薬剤師がさらに研鑽を積むべき事柄が多数あり、示唆に富んだ内容だった。