24年10月24日、「製薬・医療機器マネーデータベース」(Yen for Docs)に、医師個人への支払い額を一覧できるランキング機能が実装された(yenfordocs.jp)。これに先立つ10月1日には、それまで製薬マネーのみだったデータベースに、医療機器企業からの支払い情報(医療機器マネー、19年度)が追加されている。
今回ランキング機能が加わったことで、企業からの各年の受け取り総額上位100人の医師を確認できるようになった。
さっそく内容を見ていこう。
21年度の製薬マネートップは信州大学医学部循環器内科学教授の桑原宏一郎氏で、26社から総額2792万9481円を受け取っている。これは医師平均の35万1537円、中央値8万9875円を大きく上回る。企業別では、アストラゼネカからの408万479円を筆頭に、バイエル薬品374万5500円、第一三共343万2291円と続き、上位3社で総額の40%以上を占めていた。
一方、19年度の医療機器マネーでは、千葉西総合病院院長・心臓センター長の三角和雄氏がトップとなった。7社から総額2297万1841円を受け取っており、これは医師平均の20万7328円、中央値7万円を大きく上回る。企業別では、テルモからの1085万4719円を筆頭に、ボストン・サイエンティフィックジャパン577万円、アボットメディカルジャパン461万5122円と続き、上位3社で総額の92%を占めている。前回もお伝えしたが、医療機器分野では、特定の企業との関係がより顕著であるのが特徴だ。
製薬マネーと医療機器マネーを比較すると、トップの金額に大きな差はないが、100位の金額には明確な開きがある(製薬約1200万円、医療機器約400万円)。これは21年の製薬企業の個人への支払総額296億2222万円に対し、19年の医療機器企業の支払総額が50億6730万円と、約6分の1であることとも整合するように見える。ただし、トップの医師は製薬企業と同レベルの金額を医療機器企業から受け取っており、両者を総合的に見る必要性がある。
実はこのランキング機能の実装は、長年の検討課題であった。ジャーナリズムの観点からは、高額の資金を受け取っている医師について精査することは重要である。一方で、いたずらに医師の追及に利用されれば、医師全体に対する社会の信頼を損なう恐れがある。現にXなどのソーシャルメディアでは、ワクチン反対派等によって製薬マネーデータベースが意図しないかたちで使われている例も散見される。