そのうえで、実装の決め手となったのは、21年度の製薬マネーの調査結果である。コロナ禍を経て、1000万円以上を受け取った医師が、19年の146人から184人へと増加していた。現状、受け取り金額について明確な基準や制限はない。しかし筆者らが実施したがん患者会の会員調査では、医師が製薬企業から受け取る年間の謝金として適正と考えられる金額は「10万円以下」が57.8%、「11〜100万円」が34.9%との回答だった。一般の感覚として、謝金「1000万円」はやはり上品な金額ではない。


 今回のランキング公開は、医師の自戒を期待して踏み切ったものだ。医師の立場上、企業からの講演依頼を全て断ることは困難な場合もある。だが、「李下に冠を正さず」で、自重が肝要だ。製薬・医療機器企業との節度ある金銭関係を、常に自ら心がけられたい。


「医師は、職業規範として自らを律すべきことが期待されており、その見返りに社会的な信頼を得ている」との本質を忘れてはならない。患者のみならず自身を守るためにも、企業と適切な距離感を維持すること。以上は当然、筆者の自戒でもある。