24年度薬価制度改革では「小児用医薬品の評価充実」が図られた。「ドラッグ・ロス」に陥っている医薬品に小児用薬が多いことが問題視され、薬価上の評価を手厚くした。新薬収載時の小児加算については、最近の開発状況(国際共同治験の動向)や症例数など治験実施の困難さを踏まえて、規定された範囲内(5〜20%)で加算率付与を柔軟に判断することにした。
かつては、一般的な臨床試験では、小児は除外されるため。多くの医薬品の「使用上の注意」には「小児に対する安全性は確率されていない」といった記載が目立った。そんななか、小児加算は小児用医薬品の開発を促進するため、06年度に設けられた。しかしその後、小児加算の取得実績を見ると、大半の品目で加算率5%が適用されており、それを超える加算率が適用されるのは「極めてまれ」という状況だった。
そこで24年度改革で、加算率自体は5〜20%にとどめつつも、その範囲内で加算率を柔軟に考慮する見直しが行われた。端的に言えば、開発への取り組みを評価し、5%以外の10%、15%、20%という加算率も積極的に適用していくということだ。
有用性系加算(画期性加算、有用性加算Ⅰ、有用性加算Ⅱ)については、さまざまな評価項目をポイント化し、それを積み上げる「定量的評価」(ポイント制)が採用されている。ポイントの積算で加算率が弾き出される。
だが、小児加算に関して、そうした評価手法は未整備の状況だ。
ではどうするか。厚生労働省は、薬価算定組織(24年4月23日)のなかで「小児加算を付けるうえで(加算率の)数字はなかなか評価が難しい。事例を積み上げて、さらに精査がなされていく」(保険局医療課)との考えを示している。
24年度改革以降の小児加算取得実績を見ると、例えば、慢性心不全の小児用製剤「エンレスト」(ノバルティスファーマ)は、小児加算で最高の加算率20%を獲得。国際共同治験で開発され、慢性心不全という臨床試験が難しい領域で「日本人患者の組み入れが十分に」行われていることや、成人と小児の開発が概ね同時期だったことが評価された。気管支喘息の小児用製剤「ファセンラ」(アストラゼネカ)の加算率は15%。「6〜11歳の小児を対象に臨床試験を実施」「投与頻度の減少」「日本で最初に承認」といった点が評価され「上乗せで15%程度の加算は付けていいのではないか」(保険局医療課)との算定案につながった。
一方で、加算率5%にとどまったのは、「小児の用法・用量の明示」という加算要件を満たしながらも、同じ適応を持つ既収載品がある品目や、国内臨床試験に小児被験者が組み入れられていなかった品目など。要件を最低限満たす場合は加算率5%、日本人組み入れ数が十分な場合には20%、それら以外にプラス評価できる項目があるケースでは、その程度に応じて10%または15%といった傾向となっている。(市川)