防災意識の高まりやキャンプブームを受けて、ポータブルトイレやラップポンなど非常時のトイレ対策商品が充実してきた。それぞれに使用方法が異なっているから、初めて対峙する際の戸惑いや抵抗感は否めない。


 能登支援に赴いた先の役場トイレには「次の人のために汚物袋をセットしておきましょう」と貼り紙がされていたが、初めて非常用トイレに接する人には何の事だか理解できまい。あらかじめ体験しておく機会も多くはないだろうから、防災教室などのイベントで体験しておくのが良いだろう。たかがトイレと侮るなかれ、非常時のトイレ事情は大問題。自宅や避難所では対策されているだろうから安心を得られるが、例えば被災地支援に向かう道中に駆け込む公衆トイレ周辺の繁みには足の踏み場もないほどに、順番を待ち耐えきれなかった者たちの排泄物が潜んでいる。


 気仙沼市内でこの夏に断水になった地区があった。当事者となった数人に話を聞いたが、非常用トイレを備蓄している家は皆無だった。やむなく屋外で済ませたり、断水していないエリアの公園やコンビニまで車で出掛けたそうだ。祖父母用に買い込んでいた大人用オムツで対応したという話もあった。かく言う我が家も非常用トイレの備蓄がなく、さんざ災害対策を謳っている身でありながらそれは如何なものかと思い至り、せっかくなので薬局で非常用トイレの取り扱いを始めることにした。


 購入に際していくつかの商品を見比べてみた。基本的には「汚物袋(用を足す袋)」と「防臭袋(汚物袋を入れて捨てる袋)」と「凝固剤」がセットになっている。使用する際には和式トイレでは便器に直接、洋式トイレの場合は便座をあげてから汚物袋を便器にセットし便座をおろし座して用を足す。一連の作業を終えたら袋の中に凝固剤を振りかけ、取り外した汚物袋の口を結び防臭袋に入れて回収袋に捨てる。これが60回分で2500円前後、つまり1回あたり約45円と言ったところで、この価格に納得するか否かは、各人のトイレ問題経験によるだろう。


 入荷したパッケージを持ってみると、ずっしりと重い。とてもこれを持っては避難できないが、開封してみると10セット毎に小分けされ携帯しやすくなっているので安心だ。非常用持ち出し袋や車内に備えておきやすいよう考慮されている。