厚生労働省の「厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会」は10月31日、次期医薬品医療機器法の改正案に、製造管理・品質管理の不正事案を抑制する観点から、製造承認書と異なる成分・分量などを用いた医薬品の製造販売について、「課徴金制度」を導入することを決めた。製造承認書は当該医薬品の製造に関する「バイブル」であって、承認書に記載された内容を勝手には変更できない性格のものだ。


 小林化工の原料成分誤混入に端を発した不正事案は、後発品業界の信頼・信用を貶め、自主点検の結果も製造承認書との齟齬が次々と明るみに出るなどして、供給不足を招いている。後発品業界は、政府の使用促進策の波に乗り、成長してきたが、過度な出荷優先と利益追求の姿勢は反省しなければならない。24年に入っても、最大手の沢井製薬が承認書を遵守していない事例が発覚し、供給不足は未だに解決していない。


 課徴金制度はノバルティスファーマが不正な臨床研究データを「ディオバン」のプロモーションに用い、効能の虚偽・誇大を謳って得た利益に課された「ペナルティー」として導入された。通常は売上高に対しての割合でペナルティーの額が決まる。


 医薬品医療機器法違反は、医薬品の製造停止や、営業停止などの行政処分があるが、医薬品の供給不足が背景にあって国民の健康を守る視点から、緩い処分が続いてきた。小林化工も日医工もその恩恵に与ってきたが、これでは違反したメーカーに対してペナルティーとして軽すぎるのではないかの声が上がり、虚偽・誇大広告の課徴金制度を参考に医薬品製造に関わる「課徴金」を導入する運びとなった。ただ、あくまで経済的利得を動機とした悪質な違法行為の抑止を目的とするため、メーカーが十分に注意を尽くしていたのにも関わらず、承認内容と異なって一時的に製造してしまった場合には対象外とするように検討する。


 このほか、医薬品製造に責任役員の関与が指摘される事例もあり、沢井製薬が受けた初めての総括製造販売責任者(総責)の「変更命令」も明文化される。医薬品製造販売者の責務として、製造所における製造管理及び品質管理が適正かつ円滑に行われていることの定期的な確認や、製造管理及び品質管理に係る情報の収集を医薬品医療機器法等に規定し、省令から法律に格上げする。