肥満の科学
ヒトはなぜ太るのか
リチャード・J・ジョンソン
中里京子訳
2024年8月刊/NHK出版
定期健康診断が企業に定着したのはいつ頃からだろうか。私の場合は、業界専門紙企業に入社してすぐの年から定期検診があった。60人ほどの社員を数班に分けて指定された健診機関に行かされた。
2年後あたりから「太り過ぎ」と指摘されるようになった。30歳を超えた頃には、当時の交通標語をもじって「狭い日本そんなに太ってどこに住む」と後輩にからかわれるほどに太った。身長163㎝なのに体重は87㎏あった。自分でも苦しく、ある日酒場で倒れた。高血圧だと告げられた。
以来、降圧剤を服用し続けている。その後、32歳をピークに体重は徐々に減り始めたが、50歳から15年ほどは72㎏ほどで安定。しかしその50歳を越えた頃から言われ始めたのがBMI25を目標にしろということだった。72㎏ではBMIは27を超える。
67歳でタバコをやめた。また太るなぁと観念していたが、逆に体重は少しずつ減り始め、現在は66㎏。BMIはクリア、最近の診断では「長生きエリア」だとほめられている。現代は小太りじいさんが理想のようで、いつの間にか「理想体重」の人になった。
久しぶりに会った人には「ダイエットしましたね」と必ず言われる。何だか、年齢を重ねてちょうどいいくらいになっただけのことで、ダイエットとは無縁。ハナッからダイエットしたと決めつけられるのも鼻白む。
しかし世間を見れば、ダイエットブームは新しい世紀に入っているようだ。10月21日付の姉妹紙RISFAXでは、「減量効果のある医薬品」の開発を進めている世界中の企業は60社以上、開発中成分は120以上と述べた人の話が報じられている。GLP-1製剤の特許切れも近く、肥満は医療ケアの対象として定着した。