11月5日(現地時間)、米大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ前大統領が民主党カマラ・ハリス副大統領に圧勝した。16年の選挙では全国の得票数で民主党のヒラリー・クリントン元国務長官に287万票近い差をつけられたが、今回は米国全体の得票数でも上回った。第2次トランプ政権は全米から支持されてのスタートとなる。
トランプ前大統領はビジネスマンであるが故に、米国民から最も期待されるものは経済の発展である。それは当面と将来に分けて考えるべきだ。
当面の経済では米国中心の政策となる。ウクライナへの支援はただちに断ち切られるだろう。ウクライナは世界第2位の汚職国家であり、武器貸与法で供与した兵器に関する金は回収できないばかりか、横流しにより米国に脅威をもたらすおそれがあるからだ。日本はウクライナへの過剰な経済的負担を負わぬように努めるべきだ。
米国内のユダヤ人の人口は、イスラエルとほぼ同数であり、米国経済に強い影響力を持つが故に、第1次トランプ政権のように、イスラエルへの支援は手厚くなる。
20年1月にイラン革命防衛隊の指揮官ガセム・ソレイマニ氏を空爆で殺害したように、イランへの攻撃や制裁は激化しそうだ。
米国の歴史は「戦争中毒」と言われるほど戦争を繰り返してきた。独立戦争に始まり、先住民族との戦争、南北戦争、2度の世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、今世紀に入ってもイラクやアフガニスタンなどでの対テロ戦争を行ってきた。アフガニスタンでの戦争は史上最長となった。国民にとって戦争とは増税と死体袋でしかないと、厭戦気分が全米に染み渡っている。歴代大統領のなかで、トランプ前大統領は「戦争をしない大統領」と評されたが、実際はビジネスマンらしい効率的な戦い方をしており、それは今後の日米同盟にも共通するだろう。
トランプ政権下で日本周辺有事への米軍介入は、米国の利益が中心となるだろう。一方で米軍の犠牲は最少となるよう、現在の在日米軍基地の警備を担う自衛隊に求めるものは、ますます厳しくならざるを得ない。
将来の経済では、すでにアラスカ正面の米軍が増強されているようにベーリング海峡を挟んでの米露対立となる。北極海圏の天然資源の利権をめぐり、地球温暖化、再生可能エネルギーやEV車関連の世論形成がなされたが、それと同様のことが北方の脅威と台湾有事についても起きていると考えるべきだ。
習近平国家主席は中国人民解放軍に27年までに台湾侵攻の準備を完了するよう指示していると報じられているが、27年に侵攻が始まるのではない。経済面での圧倒的な影響力があるのは北方である。