▽公的保険ビジネスで収益を拡大してきた民間保険大手の多くが今年、逆風にさらされた

▽支払い削減と給付管理の監視強化のバイデン政権から共和党政権への移行が起こる



 共和党スイープの米国大統領・連邦議会選挙の結果を見て、最大手医療保険会社ユナイテッドヘルス・グループ(UHG)株価は6.6%上げ、歳入・収益ともに予測を上回りながら7〜9月期報告後に落とした10%分をほぼ回復した。政治環境のダメージが深かったヒューマナ、CVSヘルス(エトナ)は12%増、14%増とより敏感に反応した。



 メディケア・アドバンテージ(MA)大手各社は、連邦支払いを今年0.16%減に抑え、給付管理活動の指針強化・監視拡充に舵をとったバイデン民主党政権からの解放が株価上昇を支えた。


 共和党大統領候補のキャンペーンは、不得意なヘルスケアを避けとおした。年金ともに下げない、資格年齢は引き上げない、既往症患者保護は続けるとメディケアにも簡明なメッセージ、MA問題は蚊帳の外、民主党に批判の糸口を与えなかった。


 MAプログラムは今後も、米国保健福祉省(HHS)と傘下のメディケア&メディケイドサービス庁(CMS)のリーダーシップの意向次第だが、連邦支払いの年次改訂率の計算、関連規則の制定に産業界フレンドリーの指名が違いを出すことになる。


 2年前、雇用ベースの保険を捨てて公的保険に絞り、自前の医師診療活動を展開するUHGに倣う方針をとったヒューマナはすぐに給付費用の増加傾向に気づいた。費用増の圧力は増す一方、保険料収入に対する給付費比率(MLR)は1〜9月通算で91.7%、前年同期から6.2ポイント悪化した。来年はMA質評価に基づくボーナス減がある。MAナンバー2には売却の模索も伝えられる。


 小売薬局チェーン、薬局給付管理会社、先端看護師によるウォークイン・クリニック、プライマリ・ケア・クリック、CVSヘルスの戦略的展開もエトナのMAビジネスが足を引っ張り、全米を代表する女性CEOカレン・リンチは辞任に追い込まれた。付加給付を思い切って拡充し、高齢者加入を惹きつける選択が給付費用増に直面し他のが裏目に出た。7〜9月期のMLRは95.2%、9.5ポイント跳ね上がり、来年は薬剤給付免責額ゼロを590ドルに上げる。30%の株価下落で市場価値はエトナ買収顎700億ドルに近い750億ドルまで下がった(注①②)。


 9万人超の医師診療、薬局給付管理(PBM)、医療データ分析、ソフトウェア販売が高い成長を維持する総合ヘルスケア超優良会社UHGも春、MA連邦支払い削減に直面して底値(436ドル)を付けたが、苦闘するライバル各社を尻目に9月には609ドルに持ち直した。しかし7〜9期報告で566ドルに落とした。歳入・収益ともアナリスト予測を上回ったが、MAビジネスを取り巻く環境が悲観視された。MLR85.1%は業界指標に比べて健全だが、前年同期比1.9ポイントより高い水準だった。


 医療費管理は取引額が大きいが、1%の費用が収益状況を左右する薄利多売ビジネスである。