「おい奥谷!引きこもってないで家から出てこい!」
神戸市北区の閑静な住宅街で、「NHKから国民を守る党(N国)」の立花孝志党首が数十人の聴衆を従えて、とある一軒家に向かって大声をがなり立てる。何度もインターホンを鳴らし、挙句に「これ以上脅して、奥谷が『自死』しても困るのでこのくらいにしておく」と言い放つ始末。ほかでもない、これは11月17日に投開票を迎えた兵庫県知事選の狂乱の一幕だ。
県議会総勢86人が全会一致で失職に追い込んだ斎藤元彦前知事は、110万以上もの大量得票を得て再選。「県議会の総意」が県民・有権者から全否定される結果となった。
筆者は、元々東京で国会議員の政策秘書をしていた頃から斎藤氏とは懇意であり、自民党の神戸市議になってからも選挙区のJR垂水駅前で飲み歩いたこともある。3年前の選挙では、維新の公認を得て兵庫県知事候補として再来した斎藤氏の対立候補を筆者は応援していたが、後に自民党本部も斎藤氏を正式に公認。当時大阪府庁の課長だった斎藤氏が、わずか3カ月後には知事に当選するという近年まれにみる出世劇だったが、その煽りで当時自民党県議団は分裂し、斎藤氏の対立候補の支援を最後まで続けた県議は役職停止などの処分に追い込まれた。
3年経った今年9月9日、最初に斎藤氏を担いだ日本維新の会の県議団が、斎藤氏に辞職と出直し選挙を求める申し入れを突きつけ、その3日後には残りの県会全会派も辞職を迫った。知事失職が既定路線となってからは、斎藤知事の「生みの親」たる自民・維新両党の対応が問われることとなった。