競争するには荷が重い


 なぜ、同社はコロナワクチン開発に乗り出したのだろうか。ファイザーやモデルナと伍して、ワクチン開発に成功するのは容易ではない。アストラゼネカですら、血栓症の副反応が「致命傷」となって競争に敗れた。対象を絞りこめば、小規模な製薬企業でも成功が期待できる「治療薬」と異なり、健常人を相手にするワクチンは、大規模な臨床開発を臨機応変にしなければならない。さらにアンチワクチンへの対応も求められる。


 Meiji Seikaには荷が重かったはずだ。現に23年には、武漢株を対象にワクチン開発を行い、その結果、コスタイベが承認されたが、すでに流行の主体がオミクロン株に代わっていたため、売上が立たなかった。


 私は、Meiji Seikaが率先して、コスタイベを開発したのではなかったのだろうと考えている。国産ワクチン開発を推し進めたい厚労省の強い意向を受けてのものだったのではなかろうか。厚労省は補助金を投入し、「確保」という表現に示されるように何らかのかたちの売上げを保証したのだろう。そうでなければ、これまでの不可思議な振る舞いが説明できない。そうであればMeiji Seikaは厚労省の犠牲者だ。


 我が国のワクチン行政に欠けているのは説明責任である。Meiji Seikaは、少なくとも株主に対して、開発に着手した経緯を説明する必要がある。次の株主総会では重要な論点となるだろう。


 厚労省の責任は、さらに重い。ワクチンには巨額の税金が投入される以上、国民に説明しなければならない。国会議員も問題視し始めた。そのひとりが原口一博衆院議員(立憲民主党)だ。筆者の文章も読んでおられるようで、「今日の代議士会でチームを組み、徹底的に追及するように要請しました」と連絡があった。


 ちなみに、Meiji Seikaファルマは、10月24日に原口議員を名誉毀損で提訴する方針を決めたようで、翌25日に『ミクスOnline』は「Meiji Seikaファルマ 原口一博前衆院議員を提訴へ 選挙ビラにコスタイベの非科学的主張、看過できず」と報じた。これは衆院選挙の3日前で異様なことだ。コスタイベ問題に関心がある郷原弁護士は、「違法な可能性がある」と言う。


 これが、コスタイベ承認をめぐる問題だ。普通の医師では理解できないことが続いている。何かおかしい。もっとオープンに議論しなければならない。