私は、人材育成コンサルタントであり、研修講師である。まったくの業界外のいわば部外者でありながら、製薬会社MR研修に日々関わっている。毎回領域に合わせたカスタマイズであるが、人気研修の傾向はある。


 22年は、他業種の営業なら皆が実施している「電話でのアポ取り」が大人気。お忙しい先生に大切な情報を提供するための、秘訣を学んでもらった。23年は、「クロージング研修」を大量に受注し、領域に合わせてカスタマイズしたスクリプト(台本)が喜ばれた。


 24年は、前年に業績を上げられたリピーターのお客様から声をかけていただいたために、傾向として特定製品に的を絞った研修が多かった。私がついにこの製品のプロモーション支援かと、思わずしみじみとしてしまうような、その会社を代表する看板製品の支援も光栄なことにいくつもやらせていただいた。


 そのように、現場のリアルに合わせて研修を実施しているうちに、あることに気づいた。売上高ランキングで上位に入るような製薬会社さんや、強い製品、看板製品を背負うMRにはクロージングに特徴があるのだ。簡単に言うと、それは、クロージングが洒落ていることである。ぜんぜん押し付けがましくない。


 もうちょっと言わせてもらえば、ほとんど効果がない、そんなMRがクロージングで言う決めセリフが「お役に立てそうでしょうか?」である。へりくだりまくって恐る恐る言うのがポイントだ。


 世界ランキング上位の外資系製薬会社さんで行った研修では、「クロージングで何を言うか?」というディスカッションになったとき、多くの方が会社名を入れて「弊社〇〇は、先生のお役に立てそうでしょうか?」的なことを言っていた。どうやら口癖になっているようだった。また、〇〇に実際の会社名が入ると痺れるほどカッコ良いのだ。イメージとして会社名の〇〇の前に「世界の」などと、つけても良いくらいである。しかし、一歩間違えば会社への誇りを通り越して奢りにも聞こえる。