23、24年度と、2年連続で「特例的な」不採算品再算定が実施された。急激な原材料費の高騰、安定供給上の問題に対応するため「薬価の下支え制度の充実を図る」というのが狙いだ。一部例外はあるものの、企業から希望があった「全品目」に対して、不採算品再算定を適用した。
不採算品再算定は「保険医療上の必要性が高いと認められるもの」「薬価が著しく低額でメーカーが製造販売を継続することが困難なもの」に対して、メーカーが供給停止に陥らないよう、薬価上の措置を施すルールになる。
販売から時間が経過すると、薬価改定を経るごとに薬価が低くなる一方で、薬事規制の見直し・厳格化、設備の老朽化などで生産体制を維持するコストが嵩む。それで不採算化が進んで、メーカーは供給が難しくなる場合に「不採算に陥った」ことを申し出て、認められれば、再算定による引き上げが行われる。そんなイメージだ。
薬価を下支えする主要なルールは3つ。不採算品再算定に加えて、不採算に陥る前に薬価を維持する「基礎的医薬品」、それ以上は薬価を引き下げない基準となっている「最低薬価」がある。
特例的な不採算品再算定は、23年度に1100品目、24年度は1943品目に適用した。ただし24年度は、23年薬価調査で、薬価と市場実勢価格の「乖離率が7.0%を超えた品目は対象外」とした。同調査で業界の平均乖離率は6.0%だったが「その付近は平均値あたりで品目が多く、線引きが難しい」(厚生労働省)として、22年薬価調査の平均乖離率(7.0%)以内の品目を再算定対象とした。
25年度の薬価・中間年改定をどうするかという、中央社会保険医療協議会の直近の議論では、関連して不採算品再算定の特例的な対応についても検証している。厚労省は、日本製薬団体連合会による調査で、24年3月と8月を比較すると「再算定適用品目のほうが、適用を受けていない品目に比べ、供給状況が改善した割合が高かった」と説明。「改善」「やや改善」した品目は再算定適用品目で41.8%、非適用品目で28.3%(通常出荷品目を除く)と示した。
ただ、このデータに対し、委員から疑問の声が相次いだ。再算定適用品目の供給状況改善割合が41.8%ということは、裏を返せば、残り6割弱は「横ばい」や「悪化」が占めるということだ。「供給状況が改善できていない品目がまだあるほうが問題だ」(診療側)、「再算定が適用されたものの改善されなかった品目が多い印象」(支払側)といった厳しい指摘が出た。
厚労省はメーカー側の事情について「注文が殺到することを警戒して限定解除を躊躇する企業が多い」と説明。「漫然と限定出荷を続けない」よう促しつつ、供給改善ができていない理由に関して「定量的な分析が可能か、製薬業界と連携して対応を検討したい」と回答している。25年度の対応をどうするのか。薬価・中間年改定の扱いとともに、12月中に決定される見通しだ。(市川)