冬の到来である。11月中旬にもなると、大阪の街も急激に冷え込み始める。その変化は、健常者であれば寒さが「肌を引き締める」程度のものかもしれない。しかし、脊髄損傷を抱える私にとっては、外気温の変化が身体に与える影響が格段に大きい。


 今回は、その冷えと筋肉のこわばり、そして冬の寒さが生活にどのような影響を与えるのかについて語ろうと思う。


 脊髄損傷後の身体は、健常時と比べ、気温の変化に対する感覚が過敏だ。例えば、前日よりも気温が2〜3度下がっただけで、体がまるで別物のように感じられる。健常者だった頃、冬の晴れた朝の冷たい空気は、むしろ心地よく目を覚ますための刺激だった。


 ところが現在では、気温が18度を下回るだけで、両腕の手のひらや前腕が冷え、さらに手首から肘にかけて筋肉が筋に沿って硬直し始める。力が入りにくくなるだけでなく、痛みやしびれも増していく。


 しかし、寒さを理由に外出を控えてしまうと、筋肉を積極的に動かす機会が減るだけでなく、同僚や友人との対面での交流の質も下がってしまう。これでは身体的にも精神的にも悪影響が及ぶため、周りの協力を得て、週末も含めて日中に外出する機会をつくるよう努めている。


 冬季性うつと診断されたわけではないが、以前、夏の間があまりにも暑かったために、地下鉄やオンデマンドバスといった日光の当たらない場所ばかりに閉じこもっていたことがあった。その結果、何事にも前向きに考えられない時期が続いてしまった。


 やはり、外に出て日光を浴びて、セロトニンやビタミンDをしっかり得ることの重要性を改めて実感した次第である。日々の忙しさに追われるなかでも、外出して自然に触れることの大切さを痛感している。


硬直をほぐす


 季節ごとの厳しさもまた、脊髄損傷者にとって特有の課題を生む。夏の酷暑では、外気温が35度を超える炎天下で体温が急上昇し、熱中症のリスクが跳ね上がる。一方で冬になると、寒さによる体の硬直が著しくなる。


 例えば、家の扉を開けて一歩外に出るだけで冷気に包まれる。その瞬間、背筋の力が弱いため体が前に丸まり、肩をすぼめるように腕が硬直する。まるで見えない力で前方に引っ張られるように、腕には異常なほどの負荷がかかり、抱え込むような姿勢で固まる。こうした硬直をほぐすため、ヘルパーの助けを借りながら腕を広げたり、胸郭を開いたり、車椅子上で体を前傾・後傾させたりといった動作を日々繰り返す。


 これは会議中や打ち合わせ中でも体を動かさなければならず、まるで多動の子どものように見えることもある。