不誠実と指摘した外部委員


 調査報告書には、外部委員の推薦学会、名前・所属はおろか、専門医の領域別の人数すら記載されておらず、委員長の名前も記されていない。調査報告書がまとまった当時、朝日新聞記者だった筆者は、調査が公正中立に行われたのか疑問を持ち、取材を進めた。外部委員となる可能性があると判断した医師10人以上に書面で取材を申し込み、複数の外部委員から匿名を条件に話を聞くことができた。取材結果は、朝日新聞デジタルの「患者同意なくカルテを示す 滋賀医大、外部の医師に」という見出しの記事にまとめ、以下のように滋賀医大を批判する外部委員の声を紹介した。


「手続きに不備があるうえ、患者や外部委員、岡本医師、裁判所に対して不誠実だ」「重篤な合併症が本当に13例もあったのか疑問だ。外部委員が集まって一つひとつの事例を検討、議論していないから真偽を確かめようがない」


「係争に利用しないと書いてある報告書を裁判所に提出したのはおかしい。滋賀医大がやっていることは岡本医師に対するいじめとしか思えない」(※)


 説明義務違反訴訟では、原告代理人が被告側の証人として出廷した松末吉隆病院長に対する反対尋問で、事例調査検討委員会の設置や調査報告書の作成について尋ねた。その尋問を通じて、滋賀医大病院が自ら作った委員会規程を守らずに岡本医師の治療内容を評価する委員会を立ち上げていたことがはっきりした。事例調査検討委員会規程が、委員会は委員の過半数の出席をもって成立し、委員会の議事は原則として出席者全員の合意によるものとすると定めていることを指摘したうえで、「皆さんが出席した集まりを持たなければ、この事例調査検討委員会というのは成立しないんじゃないですか」と尋ねた原告代理人弁護士に対し、松末病院長はこう答えたのである。


「まあ、委員会のそういう立てつけからすると、そうなりますね」


※ 2019年11月19日付朝日新聞デジタル記事