②戦争が変わる


 技術の進歩により常識を変える必要があるのは戦争にも共通している。11月21日にロシアはウクライナに向け、開発中の最新の中距離弾道ミサイル「オレシュニク」を発射した。攻撃を受けたウクライナはICBM(大陸間弾道ミサイル)「ルベージュ」と報道したが、実際は核弾頭と通常弾頭の両方を搭載できる中距離弾道ミサイルである。しかし、通常弾頭では費用対効果が悪すぎるため、メッセージ性に重きを置いた攻撃だろう。


 ICBM発射の前日に米国と英国はウクライナにロシア本土を攻撃できる長射程兵器の使用を許可しており、ウクライナ軍は早速、それぞれの兵器で攻撃を行った。ロシアによる中距離弾道ミサイル攻撃はこれに対する牽制と見られる。また、9月よりロシアは20年に改定した「核兵器使用ドクトリン」を見直し、11月より「非核保有国が核保有国と組んで攻めてきたら共同攻撃と見做す」と核兵器使用要件に「集中的な空襲」を追加するなど、より積極的なものとなった。核使用ドクトリンとは「宣言政策」であって核兵器の実際の使い方を規定したものだが、「運用政策」ではない。


 米国がウクライナに地対地ミサイル「ATACMS」の使用許可を出した翌日に、ロシアが検討していた核使用ドクトリン改定の施行を公表したことからも、西側に向けての意志を示す攻撃であろう。