▽国内政策の業績・メディケア薬価交渉第一ラウンドの成果を自慢するバイデン政権に冷や水

▽値下げされる10製剤の交渉価格は4ヵ国平均の2倍、5倍の価格差さえ:ロイターの分析だ


【出典】Deene Beasley, US will still pay at least twice as much after negotiating drug prices, Reuters, 2024年9月3日

Iselin Dahlen Syversen, et al., A comparative analysis of international drug price negotiation frameworks : An interview study of key stakeholders, Milbank Quarterly 2024年9月17日(online)



 メディケア薬価交渉の第1ラウンドである10製剤の交渉価格がリスト価格(WAC=卸購入価格)比で38〜79%下がり、メディケアに60億ドル、患者負担で15億ドルの節減になるとバイデン政権がアピールしているなか、ロイターのD.ビーズリーは、スウェーデン、オーストラリア、日本、カナダの9製剤価格水準と比べれば「最大公正価格」(MFP)は平均2〜5倍の価格差が残る。それが実際だ——と喝破した。


 最初のMFPは2026年1月に実施されるが、その時期は、25年とされる第2ラウンドの交渉開始を揺るがす大統領選挙が終盤に入る時だった。


 4ヵ国にはジェネリック、バイオシミラーの低価格製剤が浸透した例が少なくなく、この米国高薬価批判は誇張であり、片手落ち気味だ。だが米国外でも価格維持力が強い抗がん剤「イムブルビカ」の3ヵ国の価格は49〜59%、半分の水準と低かった(表1)。



 比較ができない「ノボログ」を除く9製剤の2024年夏の最新の数値(30日分合計)は最小のスウェーデンで6725ドルだが、2026年1月に発効するMFPは1万7581ドルと2.6倍高い。一方、日本は低価格製剤の供給次第であるため、MFP比の変動が目立つ。


 バンダービルト大学のS.デュセッジーナはロイター分析に「米国は高い価格を受け入れて新薬の早期アクセスを手にしてきたが」とコメントしたが、自慢のアクセスも翳りをみせている。


 G.E.G.クラウス(チューリッヒ大学)ら、デュセッジーナも参加した国際研究によると、承認後の新薬払い戻し決定まで米国は平均9/2月を要し、1年後の決定率は70.7%。フランス、英国に比べると優位だが、平均期間でスイス、ドイツよりはどちらも低くなっていた(表2、注)。



 2011〜22年、各国が揃って承認し、4ヵ国では価格交渉があった新薬290製剤の分析で「医療技術評価−薬価交渉が新薬アクセスを遅らせ、長く待たせるとは限らない」と総括された。


 スイスを例外に抗がん剤アクセスはその他の新薬より払い戻しまでの時間が短い傾向にある。