政治的混乱期には、平時に想像できなかったことが、現実として起こる。そういう意味で、09年に誕生した民主党政権と、現在の自民党・石破茂政権は似通った状況にあるのかもしれない。「なりたて与党」と「少数与党」という違いはあるものの、さまざまな意味で「自民党的な」政策遂行が封じられているのは共通だ。
10月27日の衆院選で自民・公明両党が「過半数割れ」したことによって、政府の政策決定プロセスが流動化している。12年に自民党が政権を奪還し、安倍晋三氏が首相に返り咲いて以降、長く「自民一強」が続いてきた。しかし、今回の衆院選を経て少数与党となったことで、予算や法案の成立には野党の一部賛成を得ることが不可欠となった。
自公が秋波を送るのは、衆院選で解散前の7から28へと議席数「4倍増」と躍進した国民民主党だ。「手取りを増やす」というメッセージを打ち出し、同党が掲げた個別政策のうち、いわゆる「年収103万円の壁」の見直しと、「ガソリン減税」が2大看板。加えて、社会保障関係で、短期的に最重要視するのが「薬価の中間年改定の廃止」になる。
国民民主党の幹部らは12月6日、首相官邸を訪れ、石破首相に「中間年改定の廃止を求める緊急申し入れ」を行った。そこには「中医協改革に着手することを求める」という内容も含まれている。これは「中央社会保険医療協議会の構成を見直し、医薬品関連業種の代表者を加える」という提案だ。
政府の25年度予算編成に向けて、医薬品業界の関心は薬価・中間年改定の存廃に集中する一方、医療関係団体が国民民主党の主張のなかで、気に掛けているのは、むしろ「中医協改革」のほうになる。とくに日本医師会は、その行方に敏感になっている。