日本の医薬品医療機器等法に当たる中国の「医薬品管理法」では、医薬品市販承認取得者(MAH)が海外企業の場合、その海外MAHが指定した中国の国内企業がMAHとしての義務を履行し、海外MAHと連帯責任を負わなければいけないとしている。ただし、海外MAHにおける具体的な義務や責任については、触れていない。
今回は、国家薬品監督管理局(NMPA)が24年11月13日に公表した「海外MAHによる国内責任者の指定管理に関する暫定規定」(以下、暫定規定)をもとに、海外MAHに求められる義務と責任について解説したい。なお、暫定規定は25年7月1日から施行される。
NMPAは、海外MAHに対して管理を強化し、海外MAHが指定した国内責任者の義務と責任を明確にするため、暫定規定を制定したとしている。
暫定規定では、海外MAHと国内責任者の定義、双方の義務と責任を示している。国内責任者が所定の要件を満たさなかった場合または所定の義務を履行しなかった場合の処理措置なども明記している。
海外MAHとは、NMPAが発行する「医薬品登録証書」を取得した海外企業のこと。海外MAHは、医薬品市販後の製造、販売、使用の全過程で、安全性、有効性、品質の可制御性に対する責任を負わなければいけない。
国内責任者とは、海外MAHに代わって、中国国内でMAHの義務を履行する国内の法人のこと。海外MAHと連帯責任を負う。
国内責任者は一定の要件を満たさなければ、海外MAHからの指定を受けることができない。具体的な要件は4つで、①中国国内に設立された法人であること、②MAHの義務を履行するのに適した品質管理システムを有すること、③MAHの義務を履行するための適切な人員及び医薬品の品質管理活動を独立して担当する専門人員を有すること、④適切な事務所を有すること——となっている。
このうち、④の「適切な事務所」を除いた3つの要件は、既に医薬品管理法で示されている。例えば、第31条では、「MAHは医薬品の品質保証システムを確立し、医薬品の品質管理を担当する専門員を配置しなければならない」としており、これは②と③の趣旨を含んでいる。
一方、海外MAHは、初めて中国の国内責任者を指定する場合、薬品監督管理部門に権限付与文書を提出しなければならない。権限付与文書として、▽海外MAHの法定代表者または権限付与代表者の氏名及び連絡先▽国内責任者の法定代表者、企業責任者の氏名、身分証明書、企業の連絡先情報、組織図等▽海外MAHと国内責任者の代表者が連署した「義務承諾書」▽公証済みの権限付与責任リスト——の4つが求められる。
このなかで、最も重要なのは共同でサインした「義務承諾書」である。今後、両者の事業展開に大きな影響を与えることになる。