21年度、23年度と過去に2度、中間年改定が行われたなか、基本的には市場実勢価格と「連動する」算定ルールについて、中間年改定で適用してきた。ただし、実勢価格と「連動しない」ルールのなかでも「収載後の外国平均価格調整」に限っては、21年度の適用外から、23年度は「適用」へとルールが変更された(該当品目はなし)。25年度に中間年改定が実施されれば、このルールも適用される見通しだ。
そして23年度から25年度の間の変化として、24年度薬価制度改革で、収載後の外国平均価格調整ルールそのものが大きく見直された。大きく変わったのは、「類似薬効比較方式Ⅰ」での算定品目も対象になったことと、引き下げだけでなく「引き上げ」調整も可能になったことだ。ルールができた18年度と、ルールが改められた24年度を比較しながら解説を加えていく。
まず前提として、外国平均価格調整は「外国価格との乖離が大きい場合に調整を行うルール」になる。日本で算定する薬価が外国と比べて著しく高かったり、低かったりして、大きな差が生じないように適切な範囲に収めるルールだと言える。日本での価格と主要4ヵ国(米・英・独・仏)の価格を比較しており、この4ヵ国の平均を「外国平均価格」と呼んでいる。
新規収載時の外国平均価格調整は、原価計算方式と、類似薬効比較方式の一部に適用されるルールで、価格の「引き下げ」があれば「引き上げ」もある。
一方で「収載後」の外国平均価格調整は、18年度の薬価制度抜本改革時に導入された。国の医療保険財政を圧迫しかねないと、高額医薬品の問題が顕在化していたころだ。厚生労働省は、世界に先駆けて日本で薬価収載された医薬品については、収載時に外国価格を参照することができず「輸入価格の妥当性の評価が困難」なため、対策を検討。海外での販売開始後、日本の薬価と外国価格に大きな乖離が生じることへの対応も求められた。そこで、原価計算方式での算定品目については、「収載後」にも、1回に限って、外国平均価格調整を適用することにした。
その趣旨から「引き下げ」のみで「引き上げ」ルールは設けなかった。「急激な患者負担の増加を回避するため」というのが、その理由だった。
しかし、収載後の外国平均価格調整が導入されて5年余り。ドラッグラグ・ロスの解消が喫緊の課題となったのに伴い、24年度改革で厚労省は、このルールの見直しに動いた。革新的な新薬の日本への「早期導入」を促すインセンティブとして、収載後の外国平均価格調整に関して「引き上げ」調整を設ける方向に舵を切った。
ただし、「引き上げ」については、それまで該当する医薬品を使っていた患者にとっては、負担増が発生することになるため、そうした影響に配慮する観点から「改定前薬価の1・2倍を上限」とする規定が設けられた。(市川)