世界史は争いと不幸の歴史で、武力的あるいは信仰的な侵攻は今も絶えない。また疫病、飢餓、災害による困窮と克服を繰り返してきた歴史でもある。そうした苦境があったからこそ、束の間の安息を求めた娯楽や文化が各国に根付いてきた。
日本でも浮世絵や歌舞伎などの華やかな芸能や、各地に受け継がれるお祭り行事は当時の生活や圧制に対する憂さの裏返しで、民衆が集って心から笑い、鬱憤を晴らした時間であったはずだ。いつか現代を振り返ったとき、かつての民衆が心を躍らせた文化と呼べるものは生まれているのだろうか。
訪日観光客にはクリーンな日本のイメージを持ってもらいたい、と東京五輪誘致活動のあたりから始まった一連の取り組み。行儀良く、綺麗な街並み「ニッポン」を目標にした健康増進法や迷惑行為防止条例の効果はあったのだろう。
ゆっくりと嗜む酒やコーヒータイムにはタバコがつきものだと思っている私は残念ながら、居酒屋や喫茶店に出掛けることがほとんどなくなった。路上飲酒の禁止やハロウィン規制などのニュースを視ると、もちろん度の過ぎた迷惑行為は別として、気軽に憂さ晴らしのできる機会が奪われていくようで寂しい。
「大勢で盛り上がるから憂さが晴れるんだ!」と叫びたいのは、何も渋谷だけではない。規制にはストレスと経済活動の悪化はつきものだし、溜まりに溜まったストレスが引き起こす犯罪事件も後を絶たない。
来年の十二支である「巳」の文字は胎児のかたちから派生し「産まれてくる」「未来がある」などの意味があるそうだ。お金が「身(巳)に付く」と言うことで、富や幸福、成功などを祈願して小判に蛇が刻印されたりもする。
東北地方最強のパワースポットと呼ばれる宮城県岩沼市「金蛇水(かなへびすい)神社」には金蛇弁財天が祀られる。「お金の貯まる音がする鈴」の御守りは何とも言えない響きをする。季節によって色彩豊かな御朱印も人気だ。お近くにお越しの際に参拝してみてはいかがだろう。さらに蛇は脱皮するから「復活と再生」のご利益があるとのこと。災害に見舞われた地域の早期復興を心から祈念申し上げる。
本年も私の徒然寄稿にお付き合いくださり御礼を申し上げます。良いお年をお迎え下さい。