25年度予算編成も佳境に入り、財務省と厚生労働省の駆け引きが熾烈になってきた。製薬業界の関心はもっぱら「薬価の中間年改定」に集中する。財務省は納入価が薬価から乖離している製品はすべて隔たりなく薬価改定すべきとし、中間年改定においてさえ全品目を対象とした薬価改定を行うべきだとしている。昨今の医薬品不足やドラッグ・ロスの根本原因は薬価制度(とくに頻繁な薬価改定)にあるのだが、「金のことを言って何が悪い」とばかり、医療費の削減に見境がない。


 業界は中間年改定の廃止に期待を寄せたが、それは達成できず、改定の対象となる医薬品の範囲を狭める方向に舵を切った。もはや中間年改定の実施を阻止することはあきらめた格好だ。


 薬価の中間年改定実施の根拠は16年に遡る。


 16年12月の4大臣(官房長官・経済財政担当相・財務相・厚労相)が合意した「薬価制度抜本改革に向けた基本方針」だ。薬価は従来2年に1回の改定が通例とされてきたが、この4大臣合意により、薬価改定のない中間年にも実施され、中間年改定という名称が定着してきている。中間年改定の1回目実施は21年度だ。22年度は本改定、23年度が2回目の中間年改定となり、24年度は本改定、そして25年度が3度目の中間年改定となる。


 中間年改定の当初の趣旨は、薬価の乖離は2年間の間に拡大し、薬価差が大きくなることから、実勢価の反映を早くし、薬価差を縮小しようとするものであった。16年時の4大臣合意は「価格乖離の大きな品目について改定を行う」と明示されていた。20年9月薬価調査の平均乖離率は8.0%、21年9月は7.6%、22年9月は7.0%、そして23年9月は6.0%、24年9月は5.2%と報告された。そして現在も踏襲されている対象品目の選別のための0.625倍ラインには何の根拠もない。平均乖離率から厚労省が試算したいくつかのケース、すなわち1倍超、1.2倍超、1.5倍超、2倍超などから、その時の財政穴埋めに要する財源捻出のための数字合わせであり、政治決着で「0.5倍と0.75倍の中間が0.625倍」となった。


 腑に落ちないのは0.625倍という平均乖離率を下回った基準で対象が決まっていることだ。「価格乖離の大きな品目について改定を行う」とした4大臣合意とまったく合理性がない理不尽な中間年改定なのだ。乖離が大きいというのなら、少なくとも平均乖離率以上でなければならないはずだ。薬価改定を打出の小槌とするために平均乖離幅を下回ったものでも、価格乖離が大きいとする屁理屈が罷り通っている。