前回(12月1日号)から今年度末までに世の中が変わる5つのことが起きることを取り上げている。それは次の5つだ。
①世論形成が変わる
②戦争が変わる
③海外の価値観が元に戻る
④日本の円安が止まらなくなる
⑤気候が変わる
これらの変化は、もし知らなければ、今後の生活に大きな影響を及ぼすほどのものだ。今回は②の「戦争が変わる」の続きを解説する。
90%以上の日本国民にその自覚はないが、16年8月8日以来、日本は他国での「戦時状態」にある。同日、自衛隊法第八十二条の三(弾道ミサイル等に対する破壊措置)に基づき、稲田朋美防衛相(当時)が破壊措置命令を発令して以後、同命令が持続的に命令を出しておく「常時発令」の状態となり、3ヵ月ごとに命令を更新させ効力を継続しているからだ。後述するが、これは「DEFCON(デフコン)3」の状態に相当する。
朝鮮戦争が休戦中の韓国では44年ぶりに非常戒厳令が宣布された。12月3日午後10時22分(韓国標準時)、尹錫悦大統領は予告なしに生中継で非常戒厳令を宣言した。
大韓民国憲法では「国会議員の過半数が賛成して要求した場合、政府は戒厳令を解除しなくてはならない」と規定しており、翌4日午前1時過ぎ、国会で国会議員定数300人中、出席できた与野党の議員190人(過半数)が、非常戒厳の宣布に対する解除要求決議案を全員賛成により可決した。
同日午前5時頃に閣議が開き、戒厳布告解除要求決議可決を受けて、戒厳布告を解除した。
休戦中の韓国では武力侵攻に即応するため、大統領は強力な権限を持っている。非常戒厳の宣布もそのひとつだ。今回の宣布は、報道されているような、ねじれ国会状態にあり、政策上の成果を出せず、支持率が20%未満に陥りそうな尹大統領の独断専行ではない。
本来は国家に重大な危機が迫った際に宣布されるもので、武力侵攻や国内での武装蜂起が発生していない状況では、大統領個人の権限で軍隊を動員できないように、実際の権限は分立しているからだ。もし、それが可能であれば大統領個人の判断でクーデターを起こしてしまえるからだ。現実に本件では韓国国会が機能することで戒厳布告が解除されている。
休戦中の韓国では表にあるように米国本土と共通のデフコンを国家防衛態勢の基準として国民に周知させている。武力侵攻事態のほかに、北朝鮮の武装工作員の侵攻に備えるための「珍島犬警報」にも国民を動員した訓練を行っている。珍島犬警報は南北朝鮮民族間レベルのもので、在韓米軍とは直接関係がない韓国独自のもの。子どもでも理解しやすいよう犬の姿勢によって脅威の度合いを示している。珍島犬3号は「座っている犬」、珍島犬2号は「吠えている犬」、珍島犬1号は「飛びかかる犬の姿勢」である。
非常戒厳令とは、デフコンでいうEMERGCONsまたはデフコン1、珍島犬1号が宣言された状態で宣布されるべきものだ。韓国の軍隊、警察、国家安全企画部等がこれら危機を認め、態勢を整えるために大統領が韓国全土に宣言する。今回の宣布は珍島犬1号が宣言されるような事態発生の兆候が見られたためではないか。