■腫瘍外科術後の残存を減らす技術も
24年は治療薬だけでなく、医療機器と併せて用いるFirst-in-classの薬剤も承認された。
【ペグリシアニン/Lumisight、Lumicell】“Illuminate Breast Cancer in Real-Time”を謳う同剤は、乳がんの成人患者における蛍光イメージングを目的とした光学イメージング剤であり、乳房部分切除手術中に一次検体を除去した後の、切除腔内のがん組織の術中検出を補助する。乳房切除手術中に見逃されていた可能性のある残存がんをリアルタイムで検出する診断精度が 84% であり、再手術を回避できるという。従来の腫瘍外科では「術中ツールが限られており、腫瘍の範囲を十分に正確に特定できないため、腫瘍の完全切除を達成することが困難であり、乳がん患者の 36% が再手術を必要としていた」(米国外科腫瘍学会会長のKelly Hunt氏)。
ペグリシアニンは、そのままの状態では光学的に不活性なプロドラッグで、ペプチド鎖がカテプシンおよびマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)によって切断されると蛍光シグナルを発する。これらの酵素レベルは、腫瘍細胞および腫瘍関連細胞の内部やその周囲では正常細胞と比べて高くなっている。同剤は酵素による切断後に3つのフラグメントを生成。「フラグメント 1」は蛍光消光剤として標的分子をそのまま光学的に不活性な状態に保つ。「フラグメント 2」および「フラグメント 3」は、各々吸収ピークの異なる可視光領域の光を吸収して蛍光を発する。
開発したLumicell社は、より完全ながん病巣切除を目標に掲げ蛍光ガイド技術の開発と実用化に特化した非公開企業で、今回、Lumisightと併せて用いるイメージング装置Lumicell Direct Visualization System(DVS)も同時承認された。両者から成るLumiSystemは、他の固形がんへの応用を目指した臨床試験が進められている。
※【24年FDA新薬承認❷】新モダリティもオーファン優位 に続く
2025年1月17日現在の情報に基づき作成
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
本島玲子(もとじまれいこ)
「自分の常識は他人の非常識(かもしれない)」を肝に銘じ、ムズカシイ専門分野の内容を整理して伝えることを旨とする。
医学・医療ライター、編集者。薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師。