『医薬経済』2025年3月1日号より、「間違いだらけのHTA 第116回」を特別公開!



 昨今大きく論議を呼んでいる高額療養費制度の問題。2月17日の衆院予算委員会で、「多数回該当(12ヵ月間で4回以上該当する場合、自己負担額がさらに引き上げられるルール)」については、負担額引き上げを凍結する修正政府案が示された。ただし修正政府案でも、多数回該当者以外の部分は原案どおりの所得区分細分化・自己負担引き上げが維持されている。


 これに対して、2月19日には立憲民主党から引き上げそのものを全面凍結する法案が提出された。24日の党大会でも野田佳彦代表が凍結の必要性を主張した。この稿の後半でも触れるが、多数回該当ルールのみを現状維持にしても、本則部分のルールを厳しくすれば、全体への影響はやはり大きくなる。本連載の第113回(24年12月1日号)、第115回(25年2月1日号)で触れた独自分析の途中経過とともに、問題点を再整理したい。


 第115回で紹介したように高額療養費制度には、最初から制度適用後の金額だけ窓口で払えば済む「現物給付」と、いったん窓口では通常の自己負担額を支払い、適用後との差額があとで保険者から還付される「現金給付」とがある。治療が長期間・高額になるほど現物給付のメリットは大きくなるため、全体で見ても件数では48%なのが、金額では87%となる。あわせて、「高齢者は浅く・広く、若い人は狭く・深く」と称したとおり、給付1件あたりの金額は被用者保険> 国保> 後期高齢者となる。それゆえ、現物給付の占める割合は、被用者保険が最も高い。


 医療機関の立場から見ると、患者への請求額が変わる、すなわちイレギュラーな対応になるのは現物給付のほうだ。そのため、保険者に送るレセプト(診療報酬明細書)にも、「特記事項」として制度上の所得区分と、実際に患者に請求した金額(一部負担金額)が記載される。