不確定要素も多い


 ただ、住友化学が成長を託すこれら2事業については不確定要素も少なくない。


 CDMOは、「発注者がいなければ仕事にならない」(競合幹部)との言葉通り、浮沈の激しさがリスク。近年、化学各社はCDMO育成に力を注いできたが、米国で利上げの影響でバイオベンチャーの資金流入が途絶え、ここ数年、AGCなどは手痛い目に遭っている。強みを磨き上げれば、半導体の受託大手・台湾積体電路製造(TSMC)のようになれるが、いかんせん発注者である製薬企業次第。難易度の高い技術にも対応できるCDMOになることで差別化するようだが、中外製薬に代表されるように内製化回帰の動きがあるのが気になるところだ。


 もう一方の再生・細胞医療については、CDMO以上に先行き不透明。とくにラクセラが使おうとしている条件・期限付承認は、軒並み本承認に至らない。池田社長は、条件・期限付承認後の「(本承認を見据えた)治験戦略を当局としっかり相談していく」と本誌の取材に対応策を示した。


 だが、「再生・細胞医療製品は“生”の医療機器。医薬品のような感覚で大量・安定生産できるのか」(再生医療研究者)「そもそも市場規模はそんなにあるのか」(アナリスト)との指摘もあるように、いくら30年代とはいえ、屋台骨となれるような存在になれるかに関しては懐疑的な見方も根強い。未来を託すにはやや不安だというのだ。


 いずれにせよ、賽は投げられた。パーキンソン病治療薬が目標通り、25年度中に承認申請、そして承認取得できるのか。これが新中計の滑り出しを占うことになる。