小林化工の不祥事から始まった国内後発品業界の総崩れとその後の再編・淘汰を求める波。今のところ主要各社は、製品の安全・安定供給と経営の透明性の必要性は揃って認めつつも、身を切る覚悟が求められる各論に入ると、誰もファーストペンギンになりたがらないまま、信頼と地盤自体の沈下が続いている。


 もっとも、クスリを自力でつくれなくなった会社が臆面もなく新薬メーカーを名乗り続けられる「甘い」世界でもある。本音の部分では、我われ後発品業界もしばらく耐え忍んでいれば展望が開けるかもしれない、といった程度にしか危機を捉えていない可能性が高い。もし実際にそうだとしたら、何と志の低いことか。いずれにせよ、結果的に合成の誤謬を呼んで、構造的な劣化につながっているのだと想像できる。


 こうしたなか、過去、「健全」な危機感をバネとして経営や事業の変革につなげ、今また動き出そうとしている兼業医薬品メーカーがある。太陽ホールディングス(HD)だ。周知の通り、子会社の太陽ファルマが中外製薬の長期収載品13製品を譲り受け、製薬業界に参入したのが18年。その後、日本ベーリンガーインゲルハイムから1製品、アストラゼネカから4製品の製造販売承認と販売権を獲得した。後発品には現時点で手を出していないが、薬価の強い下げ圧力に直面している点では長期収載品も五十歩百歩。事業領域としてはむしろニッチ度が強い。


 同HDは加えて、19年に太陽ファルマテックを介して第一三共より高槻工場(大阪府)を取得し、医薬品の製造受託業にも進出した。こちらも従来からの固形剤・注射剤に飽き足らず、22年に画像診断用の造影剤に、23年には遺伝子治療用製品の受託製造にも事業の守備範囲を広げている。


 こうした積極投資を短期間に重ねた結果は、数字に語らせるのが一番だろう。25年3月期に見込む医薬事業の売上げは前年比11.0%増の325億円、営業利益は同▲32.3%の22億円で、売上高営業利益率は6.8%を予想する。同期の連結売上高予想1186億円に占める医薬品部門の貢献度は27.4%に達し、落下傘降下のように参入した経緯や事業環境を考えると、まずまず良好なパフォーマンスを保っている。少なくとも17年に太陽ファルマを立ち上げた当時、「電子部材屋にファインケミカルができるのか」と揶揄の声を寄せてきた連中の鼻を明かしたことだけは確かだ。