累積額控除で562億円


 中間年改定での累積額控除初適用が決まった24年12月、米国研究製薬工業協会(PhRMA)と欧州製薬団体連合会(EFPIA)は連名で「この予期せぬ決定により、企業のなかには、10年以上前から長らく策定してきた綿密な投資回収計画の見直しを迫られ、数百億円もの損失を被る可能性がある」と警鐘を鳴らしていた。


 フタを開けてみれば、今回の累積額控除全体(21成分46品目)で約562億円減となった。


 新薬創出加算が試行導入されたのは10年度の薬価制度改革だ。その後の加算額と控除額の推移を表2に示した。当初、700億円だった加算額は、16年度の1060億円をピークに減少。22年度には数字が逆転し、控除額が加算額を上回っている。24年度は加算額314億円に対し、控除額が885億円に上り、差額は571億円のマイナスとなった。試行から約15年が経過し、新薬創出加算の「恩恵」を実感しにくい状況が生まれている。



 そして今回は、制度変更で「加算額がゼロ」となる。


 どういうことか。現在の新薬創出加算は、加算対象品目となれば、薬価と市場実勢価格の乖離率が「平均乖離率以内であれば改定前の薬価まで加算(薬価を維持)する」ルールとなっている。


 25年度中間年改定では、医薬品カテゴリー別の対応を取ったことで、通常改定とは運用が異なる。今回、新薬創出加算品目は「平均乖離率(5.2%)の1.0倍超」でなければ、そもそも「改定自体の対象外」。改定対象でないということは、実勢価との乖離を埋めるように加算を上乗せしなくても、薬価が維持されるという寸法だ。


 この累積額控除以上に「議論が行われることなく」、中間年改定で実施することが決まったのが、「累積加算分の控除」である。これは20年度薬価制度改革でルールが定められた。類似薬効比較方式Iで、新薬創出加算対象外の新薬は「収載から4年を経過したあとのはじめての薬価改定(収載後3回目の薬価算定)で、収載時点での比較薬の累積加算分を控除する」というものだ。あくまで「収載時点での」というのがポイントで、それ以降に積み上がるものではない。



 今回、エーザイ(6%前半)はトップ製品の「デエビゴ錠5㎎」が13.8%減で、同社最大の引き下げ幅となったが、これは、デエビゴが、新薬創出加算品目を比較薬にして算定された品目で、今回初適用の「収載時点での累積加算分控除」を受けたためだ。


 こうした累積加算分の控除は業界全体で7成分12品目に適用され、控除額は約100億円に上った。累積控除額の約562億円と合わせれば約662億円。改定全体の薬剤費削減額は2466億円とされるなか、約4分の1は新薬創出加算の返還関連で捻出した計算になる。