米関税が医薬品株価にも波及


 2月は医薬品企業の株価も総じて軟調だった。のうち明治ホールディングス、協和キリン、アステラス製薬、ロート製薬、小野薬品工業、参天製薬、第一三共が月中に昨年来の安値を更新。特に月間終値ベースで19.4%安と大きく下げたのが第一三共(図2)だ。



 第一三共の株価は前24年3月期の業績が大幅増収増益で着地したことなどを受け、昨年4月安値4642円を底に上昇相場に転じた。8月5日には4790円まで突っ込んだものの、同19日に米食品医薬品局(FDA)が主力のADC(抗体薬物複合体)「エンハーツ」のHER2低発現乳がん適応を画期的治療薬に指定、同30日には6257円と最高値を更新した。


  が、そこから株価の足を引っ張ったのが新規ADC「ダトロウェイ」だ。9月に肺がん、乳がん向け治験データが公表されると、その内容が嫌気され5000円割れ。12月24日には肺がん向け承認申請を欧州で自主的に取り下げる一方、同27日には日本、1月17日には米国で乳がん向け承認を相次ぎ取得。ダトロウェイへの株式市場の評価は定まりかねている。1月下旬以降はトランプ氏が医薬品関税への言及を繰り返したことや、自社株買い発表(2月28日)、欧州医薬品庁(EMA)によるエンハーツのHER2低発現乳がん向け一部変更申請への承認勧告(3月3日)など強弱材料が拮抗。2月28日には一時3366円と最高値の半値近くに下げ、底値模索が続く。


 2月もトランプ氏に右往左往した東京市場。米国では新政権発足後100日間は「ハネムーン期間」と呼ばれメディアも野党も批判を避ける紳士協定があるが、今回はトランプ氏の相手構わずの舌鋒にハネムーンは強制終了しつつある。米国発の波乱要因は3月以降ますます株式相場を翻弄しそうだ。